住宅取得資金贈与の非課税は、タイミングを逃さないよう注意!

住宅を購入するにあたって住宅ローンを組むことが一般的ですが、場合によっては購入資金として父母などの親族から贈与を受けるケースもあります。

2023年現在では、住宅取得資金に対する贈与には非課税措置があり、一定の金額までは税金がかかりません。しかし、この制度も2023年12月で終了してしまいます。

※令和6年度税制改正大綱により「2023年12月31日まで」と定めていた期限が3年延長され、「2026年12月31日」まで適用延長となりました。

本記事では、住宅取得資金贈与の非課税制度に焦点を当て、概要や使うための条件や非課税額、注意点について解説していきます。これから贈与を受けて住宅を購入する予定がある方は早めに確認しておくことをおすすめします。

【目次】
贈与税とは
住宅取得資金贈与の非課税措置とは
贈与税の非課税措置の適用を失敗しないために
住宅購入資金の贈与を受ける予定のある方は2023年内に判断を!

贈与税とは

贈与税は、贈与によって財産を取得した受贈者(贈与された方)に課せられる税金で、基本的には贈与された資産の価値に対して課税されます。贈与税は「相続時精算課税」と「暦年課税」の2つに分かれており、相続時精算課税は贈与時点での評価を行い、相続時に課税される方式です。一方の暦年課税は年度ごとに贈与額の合計を対象として課税される方式となります。

ただし、基本的には生活費や教育費に充てるための資金は非課税扱いとなります。 また、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与については、一定額まで贈与税が非課税になる特例が設けられており、これらを利用することで贈与税の軽減が可能です。また、父母などから住宅取得のために資金援助(贈与)を受けた場合に適用される非課税措置があり、これを住宅取得資金贈与の非課税措置と呼びます。

住宅取得資金贈与の非課税措置とは

住宅取得資金贈与の非課税措置とは、住宅取得のために親(直系尊属)から子供または孫への資金援助であれば一定額まで贈与税を課さない制度です。

この制度を活用することで、住宅取得に必要な資金調達において大きな助けとなりますが、適用するにあたっては条件を満たす必要があります。以下では本制度を活用するための条件や非課税になる金額について説明します。

使うための条件

住宅取得資金贈与の非課税措置を利用するためには、特定の条件を満たす必要があります。具体的な条件は以下の通りです。

1. 2022年1月1日から2023年12月31日までの間に、直系尊属から贈与されること。
2. 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
3. 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)であること。
4. 2009年から2021年までの期間に「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。
5. 親子や夫婦など特別の関係がある人から取得した住宅ではないこと、またはこれらの方との請負契約等により新築・増改築等をしたものではないこと。
6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築等をすること。
7. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
8. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
9. 住宅の登記簿上床面積が40㎡以上240㎡以下で、2分の1以上に相当する部分を居住の用に供すること。
10. 中古住宅の場合、1982年(昭和57年) 以降に建築されたもの、または耐震等一定の基準を満たすもの。

これらの条件をすべて満たすことで住宅取得資金の贈与が非課税となります。条件に一つでも該当しない場合は贈与税が課されるため、必ず事前に条件を確認し、タイミングを逃さないようにしましょう。

また、2023年12月末までに贈与された資金がこの非課税措置の対象となるため、現時点から住宅の建設を始める場合には間に合いません。すでに分譲が始まっているマンションや中古住宅の購入においてはまだ間に合いますので、スケジュールを確認しながら進めましょう。

非課税になる金額

住宅取得資金贈与の非課税措置において、非課税となる金額は条件によって異なります。条件ごとに非課税となる金額は以下の表の通りです。

住宅用の家屋の種類 省エネ等住宅 左記以外の住宅
非課税になる金額 1,000万円 500万円

なお、既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります。

また、住宅取得資金贈与の非課税措置において差し引いた分を除いても贈与された金額が残る場合には、その金額に対して暦年贈与または相続時精算課税のどちらかを併用できます。贈与を受ける際には、具体的な金額や条件を確認しましょう。

贈与税の非課税措置の適用を失敗しないために

贈与税の非課税措置を適用するためには、指定された条件をすべて満たす必要がありますが、その中でも押さえておくべきポイントがあります。ここでは、「非課税の対象とならない場合」と非課税の適用を受けるための「確定申告」について説明していきます。

対象とならない場合を知っておく

贈与を受けるにあたって贈与税の非課税措置の対象とならないケースもあるため、注意が必要です。

たとえば、夫が契約者となって住宅を購入する場合において、妻の親から贈与を受けることがあります。この場合では、直系尊属からの贈与ではないため、非課税の対象外となってしまいます。

また、住宅取得資金の贈与を住宅購入の頭金などではなく、住宅ローンの返済に充てる場合も非課税の対象外となってしまいます。

贈与を受ける際には、どのような形態で資金を使うのか、また贈与する側と受ける側の関係性を考慮し、具体的な条件を確認することが大切です。もし適用できるかどうか不安な場合には、早めに専門家へ相談しましょう。

確定申告が必要となる

贈与税の非課税措置を利用する場合、結果的に贈与税が発生しない場合であっても確定申告の手続きが必要です。非課税措置の適用を受けるためには、確定申告によって贈与の事実を税務署へ報告しなければなりません。この手続きを怠ると、非課税の対象とみなされず、贈与部分について税金の支払いを求められてしまいます。

たとえば、直系尊属からの500万円の贈与に対して暦年課税で贈与税を計算する場合、以下のようになります。

贈与額500万円 - 基礎控除額110万円 = 課税額390万円

課税額390万円 × 税率15% = 58.5万円

58.5万円 - 控除額10万円 = 贈与税額 48.5万円

したがって、この場合であれば非課税措置を適用できるかで48.5万円の金額が変わります。手元資金の流出を防ぐためにも、手続きや条件については漏れの無いように対応しましょう。

住宅購入資金の贈与を受ける予定のある方は2023年内に判断を!

住宅購入にあたって親族から資金の贈与を受ける予定のある方々にとって、2023年は非課税措置を利用する最後のチャンスとなります。

※令和6年度税制改正大綱により「2023年12月31日まで」と定めていた期限が3年延長され、「2026年12月31日」まで適用延長となりました。

贈与税の非課税措置の適用にあたっては必要条件をしっかり理解し、確定申告などの手続きも計画的に行うことが大切です。非課税措置の適用にあたって不安がある方は、早期に専門家のアドバイスを受けることも視野に入れながら進めていきましょう。

 

監修
辻本 剛士
辻本 剛士(つじもと つよし)/ファイナンシャルプランナー
神戸で活動中の独立型FP。高度な専門性が求められるFP1級、CFPに独学で合格し、2023年1月から開業。
個人向けFP相談と金融に関するWEBライター業務をメインに活動中。
 
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