最終更新日: 2024年11月29日
医療費控除と住宅ローンは併用することが可能です。さらに、医療費控除や住宅ローンの仕組みを知っておけば、控除の効果をより大きくすることができます。
ただし、医療費控除は確定申告で行う必要があり、住宅ローン控除についても1年目は必ず確定申告で行わなければなりません。
この記事では、医療費控除や住宅ローン控除の仕組みを解説するとともに、確定申告の際の注意点についても解説します。
【目次】
医療費控除とは?
住宅ローン控除とは?
医療費控除と住宅ローン控除の併用は可能?
2022年4月より改正される住宅ローン控除の内容
医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間に自分や家族が支払った医療費の合計が10万円以上となった際に、確定申告を行うことで10万円を超えた部分が所得控除の対象となり、所得税の還付を受けられるものです。
医療費控除の制度の概要
この1年間とは1月1日から12月31日を指し、その間に支払った医療費が対象となります。また、医療費控除の対象となる医療費は、納税者本人に加え、生計をひとつにする配偶者やその他の親族が支払ったものも含まれます。
そして、ここでいう生計をひとつにするとは、日常生活における資金源が一緒かどうかで判断します。基本的に、医療費控除の対象となる金額は、以下の式で計算した金額で、限度額は200万円です。
医療費控除の対象となる金額=実際に支払った医療費-生命保険などで補填される金額-10万円
ただし、その年の総所得金額が200万円以下の人は、上の式の「-10万円」の部分を「総所得金額×5%」に置き換えて計算します。
したがって、総所得金額が150万円で、生命保険などで補填される金額がなければ、「実際に支払った医療費-7万5,000円」が医療費控除の対象となりますので、「支払った医療費の合計が10万円以上」でなくても、確定申告を行うことで所得税の還付を受けることができます。
また、医療費控除の対象となる医療費は、原則として診察や治療の対価として医師や歯科医師に支払う費用です。この中には、処方された薬代も含まれますし、治療に必要とみなされた場合は、義足や杖、コルセットの購入費用も医療費控除の対象となります。
さらに、風邪を引いた際に自分で、薬局などで購入した風邪薬代も、医療費控除の対象となることを覚えておきましょう。
逆に医療費控除の対象とならない医療費とは、病気の治療のための費用とみなされないものです。代表的な例として、容姿を整えるための美容整形や歯列矯正が挙げられますが、このほか、人間ドックや健康診断の費用も医療費控除の対象とはなりません。
ただし、これらによって病気が見つかり、治療を行った場合は対象となります。
控除を受けるためには確定申告が必要
医療費控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。そして確定申告の際には、医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付して提出しなければなりません。
医療費控除の明細書には、「誰が」「どの医療機関で」「いくら支払ったか」や「医療費の種類」、そして「補填される金額」を記載する必要があります。
かなり手間のかかる作業ですが、国税庁が用意している「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、比較的簡単に作成できます。
医療費の計算を行う際、生命保険や高額医療費制度などで補填される金額があれば、それを差し引くことを忘れないようにしましょう。
確定申告の時期は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。ただし、医療費控除など還付されるものだけの申告(還付申告)であれば、それよりも前(翌年の1月)から受け付けています。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は、正式名称を「住宅借入金特別控除」といい、自分が居住するための住宅を、ローンを利用して購入した場合に、その後一定期間、その年の年末時点の住宅ローン残高に応じた税額控除を受けられる制度です。
住宅ローン控除の制度の概要
住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 自分が住むための家の購入であること
- 家を取得した日から6ヶ月以内に居住し、その年の年末時点まで引き続き居住していること
- 取得した家の床面積が50㎡以上(もしくは40㎡以上50㎡未満)であり、その半分以上が居住のために使われていること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること(床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
- 利用している住宅ローンが、10年以上に渡り分割して返済する方法になっていること
これらの要件を満たすことで、基本的には年末時点の住宅ローン残高の1%が10年間税額控除されます。
契約日や居住開始日によっては、住宅ローン控除の期間が特例によって13年間に延長されますが、11年目から13年目までの控除額は、以下の計算式によって求められた額のどちらか少ない額が適用されます。
- 年末時点の住宅ローン残高×1%(上限40万円)
- 住宅購入金額(消費税分を除く、上限4,000万円)×2%÷3
ちなみに13年間の適用を受けることができるのは、以下のどちらかに当てはまる場合です。
- 消費税10%が適用される住宅を購入し、2020年12月31日までに居住を開始したケース
- 契約を2020年10月から2021年9月末までに行った注文住宅および、2020年12月から2021年11月末までに行った分譲住宅で、2022年12月31日まで居住を開始したケース
住宅ローン控除を受けるためには?
住宅ローン控除を受けるためには、初年度に必ず確定申告を行う必要があります。
住民票・登記簿・住宅を購入した際の契約書などが必要となりますので、事前に準備しておきましょう。会社員であれば2年目以降は、年末調整で対応可能です。
医療費控除と住宅ローン控除の併用は可能?
医療費控除と住宅ローン控除は、併用することができます。併用方法については、以下で詳しく解説していきます。
医療費控除と住宅ローン控除は併用できる
住宅ローン控除は、会社員の場合、2年目以降は年末調整で行うことができますが、医療費控除は確定申告が必要です。
では、会社員で住宅ローン控除の適用が2年目以降(住宅ローン控除適用期間:10年)の場合、医療費控除と併用した際、控除の流れはどのようになるのでしょうか?
以下に具体例を挙げて解説します。
【モデルケース】
- 所得控除後の課税所得金額:500万円
- 年末時点住宅ローン借入残高:2,500万円
- 1年間にかかった医療費:15万円(補填される金額はなし)
まず、会社員で住宅ローン控除の適用が2年以降であることから、住宅ローン控除は年末調整で受けることができます。
課税所得金額は500万円ですので、それに応じた所得税額は57万2,500円ですが、年末調整を行うことにより、年末時点の住宅ローン残高の1%(25万円)が所得税額から差し引かれ、最終的な所得税額は32万2,500円です。
そして、1年間にかかった医療費は15万円ですので、それから10万円を引いた5万円が医療費控除額です。医療費控除は所得控除のひとつですので、確定申告を行うことにより5万円×20%(課税所得金額に応じた税率)である、1万円が還付されることになります。
併用するメリットと注意点
医療費控除と住宅ローン控除を併用するメリットは、それぞれの控除方法の違いを理解しておくとわかりやすいかもしれません。
医療費控除は所得控除ですので、課税所得金額を下げる効果があります。それに対し、住宅ローン控除は税額控除ですので、最終的に算出した所得税を減額できます。
さらに、所得税から引き切れなかった部分については、住民税からも引くことができます。併用することにより、節税効果がより高まることが実感できるでしょう。
なかには夫婦でペアローンを組み、住宅を購入された人もいらっしゃると思います。その場合は、夫婦どちらも住宅ローン控除の適用を受けることができます。
そして、医療費控除の併用は、所得金額の大きいほうで行うようにしましょう。そうすることで、より大きな節税効果を得ることができます。
また、合わせて、ふるさと納税を行っている人もいるかもしれません。ふるさと納税はワンストップ特例制度を利用することで確定申告を不要にすることができますが、医療費控除の確定申告を行う場合はワンストップ特例制度を利用することができません。
その際には、ふるさと納税にかかる寄付金控除の確定申告も忘れずに行うようにしましょう。
還付金を受取れるタイミング
医療費控除の確定申告を行い、還付金を受取れるタイミングは、税務署に確定申告書を提出してから1ヶ月~1ヶ月半後です。申告書の提出が早いほど、還付金を受取るタイミングも早くなるでしょう。
特に上述したとおり、還付申告であれば、通常の確定申告時期よりも前に提出することができます。還付申告すれば、より早く還付金を受取れる可能性があるので、還付金を早く受取りたい人は検討してみてください。
2022年4月より改正される住宅ローン控除の内容
住宅ローン控除の内容については、2022年4月より改正されることが決まっています。まず、控除率が現行の1%から一律0.7%に引き下げられます。期限は4年間延長され、2025年までの適用となります。
また、所得要件が2,000万円に緩和され、購入する住宅の環境性能によって、住宅ローンの借入限度額が決められた点も大きな改正点といえます。
今後住宅を購入される際には、住宅ローン控除の改正内容についても十分に理解しておく必要があるといえるでしょう。