住宅の購入を検討する際、住宅ローンについて気になる人は多いでしょう。住宅ローンを利用する場合には、いろんなプランや返済方法があってなんだか難しそうというイメージを持たれる人もいるのではないでしょうか?
少しでも購入費用をおさえるためにも、住宅ローンに関する基礎知識を把握しましょう。
今回は、住宅ローンを始めて利用する人にもわかりやすいように、金利の種類や返済方法、お得な減税制度などについてご紹介します。ぜひ、住宅ローン選びの際にお役立てください。
【目次】
住宅ローンの基礎知識
住宅ローンの金利の種類
住宅ローンの返済方式
住宅ローンの申し込みに必要な書類
住宅ローン契約者が利用できる減税制度
住宅ローンに関するよくある質問
住宅ローン契約時は長期のライフプランを念頭に安心できる資金計画を
住宅ローンの基礎知識
購入資金を調達する手段としてローンを利用する際に必要な、住宅ローンの基礎知識についてご紹介します。
住宅ローンとは、自分や家族が住む住宅を購入したり、リフォームしたりするために金融機関から受ける融資のことをいいます。
住宅ローンは原則として、購入する住宅に本人が住む場合のみ利用できます。そのため、アパートのような人に貸すような住宅の場合には住宅ローンを利用できません。
住宅ローンは独立行政法人の住宅金融支援機構や銀行など民間の金融機関で提供を行っています。民間の金融機関には、銀行をはじめ、信用金庫やJA、住宅ローン専門会社などが該当します。
金融機関ごとに住宅ローンの内容が異なり、同じ金融機関でも商品によって、金利や付帯サービスなどが変わってきます。
複数の商品を見比べて、住宅ローンについて検討しましょう。
住宅ローンの金利の種類
住宅ローンを借りれば、返済が必要になります。当然、その返済には利息が含まれます。利息額は、借入額(元金)と金利(元金に対する利息の割合)により決まってきます。
利息のポイントとなる金利は大きく3種類。3つの金利タイプについて特徴をご紹介しましょう。
全期間固定金利型
借り入れ当初から完済まで一定の金利である全期間固定金利型。
ローンを借り入れる時に毎月返済する金額が決まるため、返済計画が立てやすいという特徴があります。その反面、設定される金利は、他の金利タイプに比べると高くなる傾向があります。
変動金利型
半年ごとに金利の見直しが行われる変動金利型。
金利の見直しは、金融機関ごとに市場の実勢を反映して設定します。金利の見直しは半年単位で行われますが、返済額は5年単位で調整されます。
現在の金融情勢では、変動金利型は他のタイプより金利が低くなっています。しかし、今後の経済状況によって金利が上昇して返済額が増えるリスクもあります。そのため、比較的短期間に返済が見込める方やあまり多くの借入をしない方が向いているといえるでしょう。
固定金利期間選択型
借り入れから一定期間は固定金利が採用される固定金利期間選択型。
指定の期間が終わった段階で変動金利型に変わる商品が一般的ですが、金融機関が定めている固定金利の期間が終了しても再び固定金利を選ぶことができる商品もあります。
固定金利の期間には、3年、5年、7年、10年、15年、20年、30年などがあります。固定金利期間選択型では、この期間が長くなるほど金利が高くなる傾向があります。
住宅ローンの返済方式
住宅ローンの毎月の返済額は、返済方式によっても変わってきます。
元利均等返済方式
元金と利息を組み合わせた返済額が毎月一定になる返済方法を元利均等返済方式といいます。月々の返済額が所定期間一定額に決まっているため、返済計画が立てやすいという特徴があります。
返済の当初は、返済額に占める元金の割合が少なく設定されており、返済の回数が増えていくと徐々に元金の割合が増えていきます。この場合、元金の割合が少ない返済当初の時期に繰上返済を行うとその後の利息分がお得になります。
繰上返済とは、通常の返済に加えて元金の一部または全部を返済すること。その後の返済額を軽減したり、返済期間を短縮させることができます。
返済額の大半が利息に相当する返済当初は、繰上て返済した額は元金の返済であるため、返済した元金の将来の利息分がなくなるためお得になるのです。
元金均等返済方式
毎月支払う元金が一定額になっている返済方法を元金均等返済方法といいます。この場合、元金は借入額を返済回数で均等に割った金額となり、利息は毎月の借入残高に応じた分の利息になります。返済当初は、毎月の支払額が多くなり、返済を続けるうちに、徐々に支払額が少なくなっていくのが特徴です。
この返済方式では、元利均等返済方式に比べて、返済当初から元金が一定して減っていくので、総返済額が少なく済むというメリットがあります。その反面、返済当初の支払額が大きくなってしまうので資金的に余裕がないと家計の負担が大きいので注意が必要です。
また、元利均等返済に比べて借入できる金額が少なくなることにも注意した方がよいでしょう。当初の返済額が大きいため、収入に対して返済比率が高なってしまうのです。
住宅ローンの申し込みに必要な書類
住宅ローンの申し込みにはさまざまな書類を準備する必要があります。申し込み直前に慌てることがないように、書類を手配する期間も考慮して準備を進めましょう。
住宅ローンを利用するにあたっては、事前審査を行い、その審査で承認されたのち、売買契約など購入する物件を確定させます。その後、本審査へと移ります。事前審査や本審査で必要な書類が以下のようなものになります。
- ローンの申込書:金融機関の窓口やホームページなどで入手できます
- 本人確認書類:運転免許証、住民票の写し(マイナンバー記載なし)など
- 収入確認書類:源泉徴収票、確定申告書、納税証明書など
- 資産の確認書類:(金融機関による)預金額など資産状況のわかる書類、他の借入のわかる書類物件関連書類:不動産売買契約書、重要事項説明書など
ネットで申し込む場合でも同等の書類が必要になります。
最終的に本審査の結果を受けて、住宅ローンの利用が可能になりますので、書類の記載にも不備がないよう注意が必要です。
本審査の通過後、金融機関と正式な金銭消費貸借契約を締結して初めてローンを借入することができます。
住宅ローン契約者が利用できる減税制度
高額な資金を必要とする住宅の購入。政府は、住宅ローンを契約している人のうち一定の要件を満たす方を対象に減税制度を用意しています。お得に住宅を購入するために、ぜひ活用しましょう。
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除、いわゆる「住宅ローン控除」)とは
住宅ローン減税とは、住宅の購入やリフォームなどで住宅ローンを契約した場合に利用できる減税制度のこと。正式には「住宅借入金等特別控除」と呼びます。
住宅ローン減税を受けるには、一定の要件を満たしている住宅である、一定の期間を満たした住宅ローンである必要があります。
適用を受けると、住宅ローンの年末残高の1%に当たる額を所得税や住民税から控除できるというものです。一般的な住宅で最大40万円まで控除を受けることができます。
住宅ローン控除の控除期間はこれまで10年間となっていました。しかし、2019年10月の消費税引き上げによって、控除期間が13年に延長されました。この延長は消費税10%が適用される住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に住んでいれば適用されます。
住宅ローン減税の適用要件
住宅ローン減税が適用されるには、さまざまな要件を満たす必要がありますが、代表的な要件をご紹介します。この他にも要件がありますので、実際に適用を受ける場合には、自分が全ての要件を満たしているかどうか事前に確かめましょう。
<代表的な要件の例>
- 借り入れ契約をした人のその年の合計所得額が3,000万円以下
- 取得する住宅の登記簿上の床面積の数値が、50平方メートル以上の物件
- 取得する住宅が店舗を兼ねるような場合、居住を目的とする空間の面積が全体の2分の1以上ある
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
住宅ローン減税の利用方法
住宅ローン減税を利用するには確定申告が必要です。購入した住居に入居した年の翌年の申告期間の間に確定申告することで減税の利用が可能になります。
給与所得者の場合は、1年目だけ確定申告が必要になります。2年目以降は、年末調整を行えば住宅ローン減税が適用されます。
住宅ローンに関するよくある質問
住宅ローンの金利や返済方法、減税制度など基本的な内容をご紹介しました。その他、住宅ローンの借入限度額や契約時に必要な書類など、住宅ローンに関するよくある質問にお答えします。
金額はいくらまで借りられますか?
金融機関によって融資額の上限が定められており、融資額は物件にもよりますが、多くは申込者の収入によって変わります。一般的に給与所得者の場合は、年間の返済額が額面収入の20~30%程度に収めるのが妥当といわれています。
収入に占める返済額の割合がそれ以上多くなると、家計が圧迫されて突発的な支出が必要な時に対応できなくなるおそれがあるからです。毎月の住宅ローンの返済は通常待ってはくれません。
生活が苦しくならない程度に借りることが大切です。
住宅ローンの利用時に必要な費用を教えてください
住宅ローンの利用にあたって必要になる諸費用には各種あり、合計すると数十万円が必要になってきます。
印紙代(印紙税)
金融機関との金銭消費貸借契約書に添付する印紙代(印紙税)が必要です。
融資金額が1,000万~5,000万円以下の場合は2万円。5,000万~1億円以下は6万円となります。
ローン保証料
保証会社に保証を依頼する際に保証料が必要です。保証を依頼する先によっても異なりますが、融資の借入額、返済期間によっても金額は変わってきます。
融資事務手数料
住宅ローンを利用する際、金融機関に支払う手数料が必要になります。
数万円程度の定額である金融機関のほか、融資額に連動するところもあります。中には高額になる金融機関もあります。事前に確認するようにしましょう。
団体信用生命保険特約料
住宅ローンの利用にあたって加入が義務付けられているケースが多い保険です。
住宅ローンを借りた人が完済しないうちに死亡、高度障害などで返済が困難になった場合に、保険会社が代わりにローンの残金を金融機関に返済する保険です。
この他、建物に掛ける火災保険料・地震保険料なども諸費用として必要になってくる場合があります。
返済期間はどのように決めれば良いですか?
返済期間を短く設定すると、毎月の返済額は増えますが、利息の支払総額は減少します。逆に、返済期間を長くすると、月々の負担は減りますが、返済総額は増加することになります。
長期ローンを組んで返済しながら、資金に余裕ができたタイミングで繰上返済を行ってみても良いでしょう。この方法を利用すれば、繰上返済時に返済期間を短縮するか、毎月の返済額を減らすかを選択できます。元金の返済をしたことになるので、その元金分の利息の支払額を減らすことができます。
ただし、金融機関によって繰上返済手数料が必要なこともあるため、事前に確認しておきましょう。
住宅ローンの契約時に保証人は必要ですか?
住宅ローンを借り入れる際、実際には保証人は不要です。金融機関と住宅ローンの契約をする際は、保証会社を利用することが前提になりますから、連帯保証人が不要になるのです。
保証会社にローン保証料を払うことで、万が一の時は保証会社が一時的に返済してくれます。ただし、返済がなくなるわけではありません。保証会社への返済義務は残るため注意しましょう。
また、住宅ローンの商品や契約内容によっては、連帯保証人や連帯債務者が必要になることがあります。
たとえば、親子リレーローンやペアローンは連帯債務者が必要です。
親族がそれぞれの収入を合算して住宅ローンを組むペアローンの場合は、片方が連帯保証人になります。それぞれが借り入れる場合は、お互いが連帯保証人になります。
住宅ローン契約時は長期のライフプランを念頭に安心できる資金計画を
住宅購入では、物件の代金以外に税金や手数料など、さまざまな諸費用が必要となります。たとえば、3,000万円の住まいを購入する際、住宅ローンで3,000万円を借りれば購入できるのではなく、印紙税や不動産取得税といった税金や融資手数料や仲介手数料といった諸々の手数料が発生します。つまり、住宅を購入するには、住宅価格と諸費用を含めた金額になることを理解しておきましょう!
また、住宅ローンを利用する場合は、毎月の住宅ローンの返済だけでなく、他の月々の支払いも必要です。全てを合わせた金額でシミュレーションをしてくと安心です。
住宅ローンは長期にわたり返済するもの。長期的なライフプランと共に、無理のない安心できる資金計画を立てるようにしてくださいね。
秋津 智幸/不動産コンサルタント
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。