住宅を買うときには、その物件の代金以外にもお金がかかります。引っ越し代やインテリア代、不動産屋に支払う仲介手数料や、税金、保険料など、多くの諸費用が必要になります。物件の規模や価格、融資額によっても異なりますが、大体諸費用は数十万円~数百万円以上かかるとされるため、自己資金が少ない方にとっては、住宅購入の大きな障壁となってしまいます。
こういった場合に役立つのが、諸費用の借入ができる諸費用ローンです。諸費用ローンの利用が可能な金融機関は複数ありますが、そのうちの1つが住宅金融支援機構の「フラット35」。住宅の物件代金と併せて、諸費用を借入金額に組み込むことができます。今回は、フラット35を利用する際に、借入金額に組み込める費用の種類と、注意点をご紹介します。
【目次】
フラット35の借入時に必要な諸費用
フラット35の借入金額に組み込める諸費用
諸費用込みでフラット35を利用するときの注意点
借入金額を調整して、無理のない返済計画を!
フラット35の借入時に必要な諸費用
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する住宅ローンです。フラット35の最大の特徴は、金利が変動しない全期間固定金利型住宅ローンであるということ。返済金額が変わらないため、安定した返済計画を立てることができます。
そんなフラット35では、住宅の購入代金のほかに、住宅購入にかかる諸費用もローンに組み込むことができます。
まず、組み込むことのできる諸費用として、「フラット35の借入時に発生する諸費用」があります。では、フラット35を利用する際、どのような諸費用が必要になるのでしょうか?借入金額に組み込める他の諸費用を見る前に、まずはフラット35の利用に必要な諸費用を見ていきましょう。
フラット35の借入時に発生する諸費用は、主に5つあります。印紙税、融資事務手数料、団体信用生命保険料、抵当権設定料、火災保険料です。それぞれの費用の詳細について解説します。
印紙税
住宅ローンを借り入れるときには、フラット35の取り扱い金融機関との間に、「金銭消費貸借契約書」を交わします。その際に、契約書に添付する収入印紙代が印紙税になります。
印紙税は、契約書に記入されるローンの借入額によって異なります。金額別の印紙税は以下の通りです。
- 500万円を超え1千万円以下…1万円
- 1千万円を超え5千万円以下…2万円
- 5千万円を超え1億円以下…6万円
融資事務手数料
ローン借入時に銀行や信用金庫などの金融機関に支払う手数料のことです。各金融機関で、金額や支払い方法が違います。支払い方法には2種類あり、「定額型」と「定率型」があります。
- 定額型:借入金額にかかわらず、一定額を支払う
- 定率型:借入金額に金融機関が定める割合を掛けた金額を支払う
一般的には、定額型の方が、定率型よりも手数料が少なくなります。借入時の諸費用を減らしたい場合は、定額型がおすすめです。
一方、定率型は借入時の諸費用としては多くなるものの、借入金利が定額型よりも低くなります。そのため、借入金額が大きい場合や借入期間が長い場合などでは、定率型の方が返済総額は少なくなることがあります。ご自身の状況に合わせて、どちらを選ぶか検討すると良いでしょう。
団体信用生命保険料
団体信用生命保険、通称「団信」に加入する際に必要な費用です。団信とは、万が一ローン返済中に借り入れ本人が死亡したり、重篤な状態になったりした場合に、残ったローンを肩代わりする保険のこと。近年は、借入金利に上乗せして特約料としてを支払うケースが多くなっています。
一般的には、ローンの借入には団信への加入を必須とする金融機関が多いようです。対して、フラット35は、団信に加入していなくてもローンを借りることができます。健康状態が思わしくなく、団信への加入が難しい方でもローンを利用することができるのは、フラット35のメリットの1つです。
抵当権設定にかかる登記費用
抵当権とは、万が一住宅ローンの返済ができなくなったときのために、お金を貸し出す金融機関が抵当権者となって、購入した不動産を担保に取る権利のことです。金融機関がこの抵当権を登記する際に必要となる、登録免許税や司法書士報酬などの費用を負担する必要があります。
登録免許税は借入金額の0.4%、司法書士報酬は数万円からとなります。そのほか、実費として交通費や書類取得など数万円の登記費用が発生します。
火災保険料
フラット35の利用条件として、火災保険への加入を求められます。保険料は、利用する保険会社や補償内容によって異なります。
以上が、主な諸費用です。ちなみにフラット35は、一般的に必要となる「住宅ローン保証料(借入時に、保証会社に支払わなければならない保証料)」がかからない分、工夫次第で諸費用が抑えやすくなります。
フラット35の借入金額に組み込める諸費用
ここまで、フラット35を利用する際に発生する諸費用を見てきました。では、フラット35の利用以外にかかる諸費用のうち、どういった費用を借入金額に組み込めることができるのでしょうか?早速確認していきましょう。
住宅購入時には、頭金に加えて多くの諸費用が必要となります。大体物件価格の5%~10%が一般的といわれていますが、そのうちのほとんどを現金で支払わねばならないこともあり、負担が重くなる場合があります。
フラット35では、住宅購入時に発生する一部の諸費用を含めて、融資を受けることが可能です。前述の諸費用のうち、印紙代、融資事務手数料、抵当権設定、火災保険料にかかる費用は、借入金額に組み込める対象となっています。また、団体信用生命保険も特約とすることで、金利に上乗せする形で毎月の返済に組み込むことができます。
また、ほかにも不動産会社への仲介手数料や、住宅診断(ホームインスペクション)費用、太陽光発電設備の工事費なども、借入金額に組み込むことができます。
こうした諸費用も含めて借入することで、購入時の金銭負担が軽減できます。「最低限の資金で住宅ローンを借りたい」という方は、ぜひ諸費用の組み込みを検討してみてください。
諸費用込みでフラット35を利用するときの注意点
諸費用を借入金額に組み込むメリットを理解したことで、「フラット35の利用を検討したい」という方もいらっしゃることでしょう。とはいえ、初期費用の負担が減るといっても、諸費用自体が削減されるわけではありません。諸費用ローンは適切に利用しないと、購入後の家計を圧迫してしまうことも考えられます。
事前に押さえておきたい、諸費用まで組み込んでフラット35を利用するときの注意点をお伝えします。
月々の支払額が多くなりやすい
諸費用を含めて借り入れると、借入金額が増え、当然ながら月々の支払額も増加します。さらに、含めない場合と比べ返済総額が膨らみますので、家計を圧迫するおそれがあります。
家計の圧迫を防ぐには、毎月の収入や支出、貯蓄額を計算し、月々の返済額が無理のない範囲に収まるよう調整することが重要です。不安がある場合には、諸費用ローンの利用を控え、できれば頭金を増やして借入金を減らしたり、毎月の返済額を抑えるために返済期間を長くしたりするなどの工夫をしましょう。
全ての諸費用を含められるわけではない
フラット35の借入金額に組み込めるのは諸費用の一部です。たとえば、不動産取得税や引っ越し料金、仮住まいの費用などは組み込むことができません。住宅購入に必要な頭金以外にも、ある程度は現金が必要となりますので、注意してください。
借入金額を調整して、無理のない返済計画を!
物件代金以外にも、多種多様な初期費用がかかる住宅購入。諸費用を借入金額に含むことができるフラット35は、初期費用を抑えるのに大きく役立ちます。購入資金の面で不安を抱いている方も、まずは一度、ローンのシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか?
フラット35の公式ホームページには、5秒でわかるクイック・シミュレーション機能があります。ほかにも、手軽に行えるシミュレーションツールが複数そろっていますので、ぜひ試してみてくださいね。
事前に月々の返済金額をしっかり把握して、安心して住宅ローンを利用できるようにしておきましょう。
秋津 智幸/不動産コンサルタント
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。