住宅ローンを組んだ後にやってはいけない3つのこととその対策

 

2022年以降の日本では急激な物価上昇に見舞われ、生活の苦しさを訴える人が増えています。中には住宅ローンの返済が困難な人も少なくないでしょう。

住宅ローンの返済が負担になっている場合、滞納してしまう前に対策を立てる必要があります。しかし、方法を間違えると別の問題を引き起こすおそれがあり、注意が必要です。

今回は住宅ローンの返済が難しいときにやってはいけない3つのことをお伝えします。

 

【目次】
住宅ローンを組んだ後やってはいけないこと3選
コロナウイルスの影響で収入が減った人は住宅ローンの減免措置がおすすめ
月々の返済額を減らす方法はある!支払えなくなる前に早めの行動を

住宅ローンを組んだ後やってはいけないこと3


予期せぬ収入の減少や病気などで住宅ローンの返済が難しくなった場合、なんとか乗り切りたいと考えるものです。しかし、安易な自己判断でお金を工面するのは危険です。ここでは、住宅ローンの返済中にやってはいけないことを3つ紹介します。

1:無計画な繰り上げ返済をしてしまう

住宅ローンの返済額を減らすために返済額軽減型の繰り上げ返済は有効ですが、手元に資金を残しておかないと悪影響が及ぶ可能性があります。たとえば、子どもの教育費のために準備していたお金まで繰り上げ返済に回してしまうと、進学のときに学費が不足してしまいます。

また、けがや病気で働けなくなる可能性もあるため、生活費の6カ月分は予備資金として確保しておいたほうがよいでしょう。

繰り上げ返済による貯蓄の取り崩しや返済額の変更は、他のライフイベントへの影響を考慮して慎重に検討しましょう。

住宅ローン控除で損をしないように注意

住宅ローン金利が住宅ローンの控除率以下なら、繰り上げ返済は住宅ローン控除期間が終わってからにしないと損をします。ローンの金利が控除率より低い場合は「(控除率-ローン金利)×ローン残高」の金額が利益に相当するからです。

たとえば、ローン残高2,000万円、控除率が0.7%でローンの金利が0.5%であれば、4万円が利益と考えられます。

すぐにでも返済額を減らしたい場合はやむを得ませんが、ローンの金利が低い人は住宅ローン控除期間中の繰り上げ返済はなるべく避けましょう。

2:支払い中に自宅を貸し出す

住宅ローンの返済が苦しくなった場合、自宅を第三者に貸し出すことは契約違反となります。たとえば、自宅を貸した家賃で住宅ローンを返済し、本人はローンの返済額より家賃の安いアパートに住むようなケースです。

住宅ローンは利用目的を自ら居住する住宅の取得に限定し、他のローン商品より低い金利で利用できるのです。仮に契約違反が発覚した場合、一括返済や損害賠償を請求される可能性があります。

転勤などで一時的に空き家になってしまう場合は、金融機関によっては賃貸を認められることもあります。ただし、賃貸に供している住宅には、住宅ローン控除が適用されなくなる点にも注意しましょう。

3:滞納してしまう

住宅ローンの返済が難しくなっても、滞納は避けるべきです。残高不足で1度延滞した程度であれば、自宅を失うほどの大きな問題にはなりません。

ただし、各種ローンの延滞の履歴は、個人信用情報機関に一定期間は残ります。そのため、延滞履歴が残っているうちに他のローンを申し込んだ場合、審査に通らないおそれがあります。

住宅ローンの延滞がおよそ6カ月続くと「期限の利益」を喪失し、金融機関から住宅ローンの残債の一括返済を請求されます。その後、保証会社による代位弁済が行われ、返済先が保証会社に切り替わります。

保証会社に対する返済ができない場合、自宅を任意売却や競売にかけた売却代金で返済するしかありません。その際に売却代金が残債より少なければ、返済が続くことになります。つまり、自宅はないのに返済は続けていかなければいけなくなってしまいます。

このような事態を避けるには、返済が厳しくなったら延滞をする前に金融機関に相談しましょう。

住宅ローンの返済が苦しくならないための対策


住宅ローンの返済は短くても10年以上の長期に渡るため、状況が変わって途中で返済が苦しくなる可能性もあります。ここでは、住宅ローンの返済で苦しまないための対策を紹介します。

住宅ローンの金利を見直す

住宅ローンの金利が高いと毎月の返済額が多くなるだけでなく、総返済額も膨らみます。最初から金利の低い、条件のよいローンを選ぶことが大切です。

返済中の住宅ローンの金利が高めの場合、借り換えによって毎月の返済額が軽減される可能性があります。住宅ローンの借り換えとは、返済中のローンを一括返済して、新たに住宅ローンを借りることをいいます。

住宅ローンの借り換えは、以下の3つの条件を満たしたケースで有利とされています。

  1. 借り換え前後の金利差が年1%以上
  2. 住宅ローンの残債が1,000万円以上
  3. 返済の残存期間が10年以上

借り換えでどれくらい返済額が減る?

借り換えで返済額が減るケースを見ていきましょう。事例は現在のローン残高2,000万円、適用金利1.5%、残存期間が20年の場合に0.7%の住宅ローンに借り換えた例です。

  現在のローン 借り換え後
金利 1.5% 0.5%
毎月の返済額 96,509 87,586

 

借り換えによって毎月の返済額が96,509円から87,586円と約9,000円軽減できます。

借り換えと住宅ローン控除

住宅ローン控除の対象となるものは、住宅の新築、取得または増改築等のための借入金です。そのため、借り換えは原則として住宅ローン控除の対象ではありません。

 

ただし、以下のいずれの条件も満たす場合は、住宅ローン控除の適用を受けられます。

  1. 新しい住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためであることが明らかであること
  2. 新しい住宅ローンが返済期間10年以上などのローン控除を受けるための要件に当てはまること

ライフプランを考慮して返済計画を立てる

住宅ローンを組む際には、ライフプランを考慮して返済計画を立てましょう。

住宅ローンの返済は長期に渡るため、その他のライフイベントと併行して返済を行う場面も考えられます。借り入れ当初は問題なく返済できたとしても、他の支出と重なると返済が苦しくなるかもしれません。

そのような状況でも無理なく返済できる借入額や返済期間を設定することが重要です。たとえば、50代でローンを組むならフラット35の親子リレー返済なども選択肢の1つとなるでしょう。

それでも途中でローンの返済が苦しくなった場合は早めに金融機関に相談し、善後策を考えましょう。

住宅ローンを組むなら事前準備が大切


住宅ローンを無事に返済しきるには、契約前に無理のない返済計画を立てることが大切です。事前に返済中のライフイベントを想定し、併行して支払っていけるかを確認しましょう。

十分に検討した返済計画を立てても、不測の事態が起きてローンの返済が苦しくなるかもしれません。しかし、当初の計画がしっかりしたものであれば、計画変更も比較的スムーズにできるでしょう。

監修

松田 聡子(まつだ さとこ)/ファイナンシャルプランナー

群馬FP事務所代表。日本FP協会認定CFP®・DCアドバイザー・証券外務員2種。ITエンジニア、国内生命保険会社を経て2009年に独立系FPとして開業。
「住宅ローンを無事に返済しきるには健全な計画が肝心」をモットーに住宅ローン相談にも対応中。

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