マイホームを購入する場合に知っておきたい制度の1つが「住宅ローン控除」。住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、要件を満たせば年末時点での住宅ローン残高の0.7%が最大13年間所得税・住民税から控除される制度です。2022年の税制改正により、これまで住宅ローン控除の内容と変わった部分があります。
今回は、住宅ローンの基本的な内容と2022年度税制改正の主なポイントについて解説します。住宅ローンを利用する場合の注意点についても解説しますので、住宅ローンを利用してマイホームの購入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
住宅ローン控除とは?
2022年度税制改正後の主なポイント
住宅ローン控除を利用する際の注意点
住宅ローン控除の仕組みを理解した上で活用していこう
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、住宅ローンの借り入れによりマイホームを購入する場合に、年末時点での住宅ローン残高の0.7%が最大13年間、所得税(所得税で控除しきれない場合は一部翌年の住民税)から控除される制度です。ここでは、住宅ローン控除の主な適用条件などの、基本的な内容を確認してみましょう。
主な適用条件
・自己居住用の住宅であること
・床面積50㎡以上(※合計所得金額1,000万円以下の場合に40㎡以上に緩和される特例あり)
・合計所得金額2,000万円以下
・住宅の引渡しまたは工事完了から6か月以内に居住すること
・店舗等併用住宅の場合は床面積1/2以上が居住用
・住宅ローンの返済期間10年以上
・1982年1月1日以降に建築されたもの、もしくは耐震性の基準に適合することが証明されているもの(中古住宅の場合) など
大前提として、自己居住を目的とした住宅であることが条件となっています。床面積や収入、住宅ローンの借入期間、住宅の耐震性なども適用条件の1つです。新築住宅や中古住宅の購入だけでなく、住宅の増改築等の場合も要件を満たせば対象となります。
手続きの流れ
住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年に確定申告をする必要があります。会社員の場合、2年目以降は会社で年末調整を行ってもらうことにより控除を受けることが可能です。
1年目は、確定申告に必要な書類を集めた上で、管轄の税務署で確定申告を行いましょう。事前に手続きをすれば、e-Taxによりオンライン上で確定申告することができます。詳しくは、e-TaxのWebサイトをご確認ください。
主な必要書類
・計算明細書
・住宅ローンの年末残高等証明書
・登記事項証明書
・請負契約書・売買契約書の写し など
住宅ローン控除の適用を受けるためには、上記のような書類が必要です。認定長期優良住宅など、住宅の種類によって必要になる書類もあるため、詳しくは管轄の税務署や住宅メーカーの担当者などに相談してみてください。
2022年度税制改正後の主なポイント
2022年度税制改正により、住宅ローン控除の内容にも変更がありました。ここでは、2022年度税制改正後の主なポイントについて解説します。
控除率・控除期間
改正前の住宅ローン控除率は1%でしたが、2022年度税制改正により0.7%に変更となりました。控除期間は新築住宅等が原則13年、既存住宅は10年となっています。
住宅の環境性能等に応じた借入限度額の上乗せ
【新築住宅・買取再販住宅】
借入限度額 | |
長期優良住宅
低炭素住宅 |
・2022~2023年入居 ⇒ 5,000万円
・2024~2025年入居 ⇒ 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | ・2022~2023年入居 ⇒ 4,500万円
・2024~2025年入居 ⇒ 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | ・2022~2023年入居 ⇒ 4,000万円
・2024~2025年入居 ⇒ 3,000万円 |
その他の住宅 | ・2022~2023年入居 ⇒ 3,000万円
・2024~2025年入居 ⇒ 0円 |
【中古住宅】
借入限度額 | |
長期優良住宅
低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
・2022~2025年入居 ⇒ 3,000万円 |
その他の住宅 | ・2022~2025年入居 ⇒ 2,000万円 |
改正前は新築住宅において「一般の住宅」と「良質な住宅(認定住宅)」をわけて限度額が計算されていました。2022年度税制改正により、住宅性能に応じた借入限度額が定められています。「良質な住宅」のバリエーションが増えたこと、中古住宅にも住宅の性能に応じた借入限度額の上乗せが行われることは、大きなポイントだといえるでしょう。
新築住宅は、入居時期によって段階的に限度額が縮小していきます。なお、上記の認定住宅等に該当しない住宅(=その他の住宅)を新築する場合、2024年1月1日以降に入居する場合、2023年末までに新築の建築確認を受けている住宅であれば借入限度額2,000万円・控除期間13年となりますが、新築の建築確認を受けるのが2024年以降になると住宅ローン控除の適用対象外となることに注意が必要です。
所得要件の引き下げ
改正前の住宅ローン控除の所得要件は、合計所得金額3,000万円以下とされていました。今回の税制改正により、合計所得金額が2,000万円以下に引き下げされています。なお、床面積が40㎡〜50㎡の住宅の所得制限は1,000万円以下です。
中古住宅の築年数要件が緩和
これまで中古住宅は耐火住宅が築25年以内、非耐火住宅は築20年以内という築年数要件がありましたが、税制改正により「1982年1月1日以降に建築されたもの(新耐震基準適合住宅)」に緩和されました。
住民税における控除限度額の引き下げ
住宅ローン控除は、基本的に所得税から控除される制度ですが、控除しきれない分は一部、住民税からも控除されます。住民税からの控除上限額はこれまで「13.65万円」でしたが、2022年度税制改正により「9.75万円」に引き下げられました。
住宅ローン控除を利用する際の注意点
ここでは、住宅ローン控除を利用する際の注意点について解説します。注意点をしっかりと理解して、住宅ローン控除を活用していきましょう。
住宅購入前に住宅ローン控除の適用条件を確認する
年末時点での住宅ローン残高の0.7%が、最大13年間税額控除される住宅ローン控除は、大きな節税効果のある税制度です。そのため、購入したい住宅が住宅ローン控除の適用条件を満たしているか、購入する前に必ず確認しておきましょう。
入居翌年の確定申告を忘れずに
住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年に確定申告をしなければなりません。適用条件を満たせば自動的に控除が受けられるわけではないことに注意しましょう。確定申告でわからない点があれば、管轄の税務署に相談してみてください。
住宅ローン控除と確定申告については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【サラリーマン向け】住宅ローン控除に確定申告が必要って知ってた?大切な書類・手続きについてFPが解説!
繰り上げ返済のタイミングに注意する
住宅ローン控除の適用を受けている途中で繰り上げ返済をする場合は、シミュレーションした上で繰り上げ返済の金額やタイミングを検討しましょう。金利などの条件によっては、繰り上げ返済をしない方が効果的であるケースがあるからです。
また、住宅ローン控除の適用条件の1つに「返済期間10年以上」という項目があります。繰り上げ返済をして返済期間を短縮する場合は、住宅ローン控除の適用条件を満たすかどうか必ず確認しておきましょう。
住宅ローン控除の仕組みを理解した上で活用していこう
今回ご紹介したように、住宅ローン控除は節税効果の高い税制度です。税額控除であるため、支払う税金をダイレクトに抑えることができます。マイホームの購入を検討する場合は、住宅ローン控除の適用条件を満たすかどうか事前に確認することをおすすめします。住宅ローン控除に関する情報収集をする場合は、2022年度の税制改正によりこれまでの住宅ローン控除と異なる項目があることに注意しましょう。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年に確定申告をする必要があります。確定申告の時期になってから慌てないよう、早めに書類を準備しておくことをおすすめします。住宅ローン控除の仕組みをきちんと理解して、効果的に活用していきましょう。
亀梨 奈美(かめなし なみ)/住宅ローンアドバイザー
大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。