税制改正で2022年以降の住宅ローン控除はどう変わる?改正の内容や申請の方法などを解説

2022年に住宅ローン控除が改正され、控除率や控除期間などが変更となりました。今回の税制改正により、住宅ローン控除はどのように変わったのでしょうか。

本記事では、2022年の住宅ローン控除改正の内容や、申請方法などをお伝えしていきます。

 

【目次】
税額そのものを控除する住宅ローン控除
2022年以降の住宅ローン控除はどうなる?
住宅ローン控除の適用条件とは?
住宅ローン控除を申請するには?
2022年以降の住宅ローン控除は2022年1月からの入居が適用!

税額そのものを控除する住宅ローン控除

「住宅ローン控除」とは住宅ローンを利用してマイホームを買ったときに、「年末時点での住宅ローンの残高の一定割合」が所得税や住民税から控除される制度です。

住宅ローン控除は「税額控除」といって税額から直接控除額を差し引けるため、節税効果の高い税制といえます。

2022年以降の住宅ローン控除はどうなる?

2022年に住宅ローン控除の制度が大きく改正されることになりました。
ここでは、改正を受けて、2022年以降の住宅ローン控除がどうなるか見ていきましょう。

控除率が1.0%から0.7%へ変更

2022年の制度改正により、控除率が0.7%に変更となりました。
例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円だった場合、3,000万円×1.0%=30万円の控除を受けられていたものが、3,000万円×0.7%=21万円に減ることとなります。

なお、この控除率の変更については以前から言われていたもので、住宅ローン控除の「逆ざや(ぎゃくざや)問題」を解消する目的があります。

バブル崩壊以降は金融緩和政策が長く取られており、住宅ローンの金利は1.0%を切るものも多いです。中には、変動金利で0.3%台で利用できる住宅ローンもあります。

住宅ローン控除を利用することにより、0.3%の金利であるのにもかかわらず住宅ローン控除で1.0%の還付を受けるといったことが可能だったのです。この場合、「(控除率-ローン金利)×ローン残高」相当額が利益になると考えられます。ローン残高3,000万円であれば、21万円が利益になるわけです。こうした問題を解消するために、「控除率を減らす」という改正がされることになりました。

ただし、単に控除率を減らすのではなく、「控除期間を延ばす」という改正も行われています。

新築住宅の控除年数が10年→13年へ変更

2022年の住宅ローン控除制度の改正では、控除年数が10年から13年に延ばされています。

例えば、住宅ローンの借入額3,000万円で途中の返済を考慮しない場合、控除額の合計は以下の通りです。

計算式

控除額の合計

改正前

3,000万円×1.0%×10年間

300万円

改正後

3,000万円×0.7%×13年間

273万円

 

控除期間が13年になっても、控除額の合計は減ってしまっていますが、大きな差はないといえるでしょう。

また、年収がそこまで高くない人にとっては、むしろ改正後のほうが多く控除を受けられる可能性があります。

なお、住宅ローン控除は所得税や住民税から控除を受けられるものなので、そもそも所得税や住民税を納めていなければ控除や還付を受けることはできません。

例えば、年収400万円のサラリーマンにおける平均的な所得税の額は8~9万円ほどです。また、住宅ローン控除で住民税から控除できる額の上限は13万7,500円と定められています。

つまり、サラリーマンで年収400万円の方が、3,000万円分の住宅ローン控除の適用を受けたとしても、実際には22~23万円程度しか控除を受けられないのです。

仮に、毎年9万円の所得税を納めており、9万円+13万7,500円=22万7,500円の控除を受けられる場合で、改正前と改正後の合計額の違いを見てみましょう。

計算式 控除額 控除額の合計(最大)

改正前

3,000万円×1.0%=30万円 22万7,500円×10年間

227.5万円

改正後 3,000万円×0.7%=21万円 21万円×13年間

273万円

 

上記通り、年収次第では改正後のほうが多くの控除額を受け取れる計算となります。

借入限度額が一般住宅で4,000万円→3,000万円へ変更

改正前は一般住宅の借入限度額4,000万円だったものが、3,000万円へと変更されています。ただし、住宅の性能次第では最大5,000万円まで控除を受けることが可能です。

なお、一定の省エネ性能を持たない住宅(一般住宅)については、2024年以降は住宅ローン控除を受けられなくなってしまいます。

住宅の性能等に応じた借入限度額をまとめると、以下のようになります。

住宅の性能

2022年・2023 2024年・2025

長期優良住宅・低炭素住宅

5,000万円 4,500万円

ZEH水準省エネ住宅

4,500万円

3,500万円

省エネ基準適合住宅 4,000万円

3,000万円

その他住宅 3,000万円

0円

 

所得要件が3,000万円→2,000万円へ変更

住宅ローン控除の適用を受けるための所得要件が、3,000万円から2,000万円へと変更されています。

給与所得での所得額はもちろん、給与所得が高い方以外では、株や不動産を売却して一時的に年収が高くなってしまうことなどもあるでしょう。年収が2,000万円を超えるかどうかギリギリ、という方は注意が必要です。

住宅ローン控除の適用条件とは?

住宅ローン控除の適用を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

ここでは、新築住宅の場合と中古住宅の場合とに分けて見ていきましょう。

新築住宅を取得した場合

新築住宅を取得した場合の住宅ローン控除の適用要件には以下のようなものがあります。

  • 住宅を新築・取得してから6ヶ月以内に居住すること
  • 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住すること
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得額が2,000万円以下であること
  • 床面積が50㎡以上であり、かつ居住面積が2分の1以上であること
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上であること

 

なお、「6ヶ月以内の居住」や「12月31日まで引き続き居住すること」については、転勤などのやむを得ない事情がある場合は、一定の要件を満たせば控除を受けることが可能です。
一定の条件とは、例えば単身赴任であれば親族が住めば問題ありません。

また、面積については、令和5年以前に建築確認を受けたものについては、40㎡以上に緩和されています。

ただし、40㎡以上で住宅ローン控除の適用を受けるためには、合計所得金額1,000万円以下である必要があります。

既存住宅(中古)を取得した場合

中古住宅の購入で住宅ローン控除の適用を受けるためには、新築住宅の購入時の要件に加えて、以下の条件のうちいずれかを満たす必要があります。

  • 1982年(昭和57年)1月1日以降に新築されたものであること
  • 地震に対する安全性に係る一定の基準に適合しているもの

 

改正前は木造なら築20年以内、RC造であれば築25年以内が条件でしたが、2022年の改正により1982年以降の建築、つまり「新耐震基準の住宅」であれば適用を受けられるように変更がなされました。

住宅ローン控除を申請するには?

住宅ローン控除の適用を受ける場合、会社員であれば初年度は確定申告、2年目以降は勤め先の会社で年末調整すればよいこととなっています。

初年度で確定申告が必要な場合、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」の利用で申告書を作成することが可能です。また、マイナンバーカードとカードリーダーがあれば、自宅から確定申告を済ませることもできます。

自治体によっては確定申告期間中に相談と申告用の会場が設けられることもあるため、直接相談したい場合は「確定申告 (住んでいる市町村名)」などでインターネット検索をしてみるとよいでしょう。

2022年以降の住宅ローン控除は2022年1月からの入居が適用!

今回は、2022年に改正された住宅ローン控除についてお伝えしました。

今回の改正でもっとも大きい改正といえるのが、「控除率の縮小」でしょう。ただ、控除期間が延びたことにより、年収によっては改正後のほうがお得に利用できるようにもなっています。

また、現行の税制で住宅ローン控除を受けるためには、2022年1月から2025年12月までの間に入居する必要があるという点には注意しなければなりません。

これから家づくりを考えている方は、住宅ローン控除の変更点と現行の法律の内容についてよく理解したうえで進めるようにしましょう。

監修

松田 聡子(まつだ さとこ)/ファイナンシャルプランナー

群馬FP事務所代表。日本FP協会認定CFP®・DCアドバイザー・証券外務員2種。ITエンジニア、国内生命保険会社を経て2009年に独立系FPとして開業。
「住宅ローンを無事に返済しきるには健全な計画が肝心」をモットーに住宅ローン相談にも対応中。

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