住宅購入の第一歩は予算決めですが、その際に重要なのが「自分の年収なら、いくらまで住宅ローンを組めるのか」という部分です。
ローンの借入額の目安がわからなければ、予算は考えられません。
そこで今回は、年収からみる住宅ローンの目安や、無理なく返済できる借入額を判断する基準についてお伝えしていきます。
住宅ローンの目安を知りたい方は、参考にしてください。
【目次】
年収からみる住宅ローンの借入額の目安
無理なく住宅ローンを返済する方法は?
住宅ローンと年収に関する注意点住宅ローンと年収に関する注意点
年収からみる住宅ローンの借入額の目安
一般的に、住宅ローンの借入額の目安は「年収の5~7倍」だといわれています。ただし、住宅ローンの借入条件は年収以外にもさまざまな項目から総合的に審査されるため、必ずしも目安通りに借り入れできるわけではありません。
とはいえ、住宅を購入した方が実際どのくらい借り入れしたのか気になりますよね。ここでは、住宅金融支援機構が公表している「2021年度 フラット35利用者調査」から、住宅ローンを借り入れした方の平均をまとめました。
住宅の種類 | 所要資金 | 世帯年収 | 年収倍率 | 自己資金の割合 |
土地付注文住宅 | 4,455万円 | 639万円 | 7.5倍 | 9.3% |
注文住宅 | 3,572万円 | 602万円 | 6.8倍 | 16.7% |
建売住宅 | 3,605万円 | 563万円 | 7.0倍 | 7.5% |
中古戸建て | 2,614万円 | 508万円 | 5.7倍 | 8.2% |
新築マンション | 4,528万円 | 788万円 | 7.2倍 | 17.4% |
中古マンション | 3,026万円 | 608万円 | 5.8倍 | 13.8% |
出典:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」より
上記の表をみてわかるように、どのタイプの住宅でも、世帯年収に対して平均5〜7倍の範囲で住宅ローンを組んでいます。
そして自己資金の割合が8〜17%と出ていることから、多くの方が住宅価格の80〜90%を住宅ローンから支払ったことが読み取れます。
平均からみても、住宅ローンの借入額は「年収に対して5〜7倍」、住宅価格の「80〜90%」までだと考えておくと良いでしょう。
無理なく住宅ローンを返済する方法は?
前項では、住宅ローンの借入額の目安をお伝えしました。しかし、年収に対する借入額はあくまで目安なので、大切なのは家計の支出状況やライフスタイルです。
ここでは、住宅ローンを無理なく返済する方法をお伝えします。
返済比率は20~25%以内に収める
住宅ローンを無理なく返済するための判断基準の1つとして、返済比率が挙げられます。返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合のことをいいます。返済負担率、年収負担率などと呼ばれることもあり、次の計算式で算出できます。
「年間のローン返済額(住宅ローン以外のローンを含む)÷額面年収×100」
この計算で求めた数値が大きいほど、返済負担も大きくなります。
また、返済比率を計算する際には 住宅ローンだけではなく、自動車ローンやカードローンなど他の返済も含まれる点に注意してください。住宅ローンの借入額は無理がない金額だったとしても、他の返済額と合わせると数値が高くなることも考えられます。
住宅ローンにおける返済比率のボーダーラインは30〜35%といわれていますが、理想の返済比率は20〜25%以内です。
数字だけみてもイメージできないので、年収500万円の方を例に返済比率を考えてみましょう。
- 返済比率20%:500万円×20%=100万円
- 返済比率25%:500万円×20%=125万円
- 返済比率30%:500万円×30%=150万円
- 返済比率35%:500万円×20%=175万円
年収500万円の方の理想の年間返済額は100〜125万円、月にすると8.3〜10.4万円とされています。
一方で審査のボーダーラインとなる30〜35%の場合の年間返済額は、150〜175万円、月にすると12.5〜14.6万円です。返済額が大きく増えました。
返済負担率から返済額を計算し「本当に返済できる金額なのか」しっかりシミュレーションしながら借入額を調整しましょう。
返済比率の目安について以下の記事で詳しく説明していますので、こちらも併せて参考にしてください。
住宅ローンの返済比率の目安│安定して返済を続けやすい適正値は?
定年時の住宅ローン残高は1,000万円以下になるように調整する
住宅ローンの返済が定年後も続く場合は、定年時の住宅ローン残高にも注意が必要です。一般的に、定年退職後は収入が先細りします。そのため、退職後は収入に対する住宅ローンの返済額の割合が大きくなってしまうのです。
現役で働いているときには問題なく返済できていたとしても、住宅ローンの返済の負担が大きくなり老後の生活に影響が出る可能性も考えられるでしょう。
一般的に、定年時の住宅ローン残高は1,000万円以下に抑えることが望ましいといわれています。
住宅ローンの借入総額を考えることはもちろん大切ですが、定年時のローン残高や完済時の年齢も考慮しながら借入額を決めてください。
住宅購入前にしっかりと資金計画を立てる
住宅購入において、もっとも大切なのは資金計画だといっても過言ではありません。
ローン審査を通過して住宅購入できたとしても、ローンの返済ができなければ住宅を手放すことになるからです。
そのため、住宅購入をする際には「借り入れできる額」ではなく「返済できる額」をしっかりと考える必要があります。そのために欠かせないのが、収入支出の洗い出しです。
まずは以下の項目がそれぞれどのくらいなのか、家計内容を確認してみてください。
- 現在の貯蓄額
- 収入
- 月々の生活費(家賃、食費、通信費など)
- ローンや奨学金などの返済額
- 定期預金、投資
- 生命保険、学資保険
これらの金額を確認したうえで「月々いくらまで返済できるのか」「貯蓄からどのくらい自己資金を出せるのか」などから住宅ローンの借入額を考えましょう。
また、収入支出を洗い出す際には、お子さんの入学や卒業、車の購入など「ライフプラン」の確認もしておくことをおすすめします。この先どのくらいの支出があるのか把握しておけば、自ずと手元に残しておくべき資金もわかるからです。
まずは家族会議を開き、家計の収入支出を確認してみてください。
早い年齢で借り入れをする
住宅ローンを無理なく返済するポイントの1つとして、年齢が早いうちに借り入れを始めることが挙げられます。年齢が若いほうが借入期間を長く設定して毎月の返済額を減らすことができたり、定年退職前に完済して余剰資金を老後生活に充てたりすることができるからです。
また、住宅ローンの借り入れ時には、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険への加入が義務付けられています。健康状態によっては団信に加入できない場合は、住宅ローンの融資を受けることはできません。
病気の発症は予測できるものではありませんが、一般的に、年齢を重ねるほど病気などのリスクが高まります。健康面が借入条件に影響を及ぼす可能性があることからも、早い年齢で借り入れをしたほうが有利であるといえるでしょう。
繰り上げ返済を活用して利息を減らす
住宅ローンの繰り上げ返済とは、返済期間の途中でまとまった金額を返済することをいいます。繰り上げ返済の資金はすべて元金に充てられるため、将来支払う予定であった利息を減らし、総返済額を減らせることがメリットです。
繰り上げ返済には、返済期間を短縮する「返済期間短縮型」、月々の返済額を減らす「返済額軽減型」があり、それぞれ特徴が異なります。
返済期間短縮型は毎月の返済額は減りませんが、返済期間を少なくすることで結果的に総返済額を減らせることがメリットです。これに対して「返済額軽減型」は、返済期間は短くなりませんが、月々の返済額が減るので家計にゆとりが持てます。
ただし、繰り上げ返済をすると手元資金は減り、金融機関や契約内容によっては手数料がかかるケースもあるので必ずしもプラスに働くとは限りません。
繰り上げ返済は、保険の満期金が支払われたときや定年退職金が出たときなど、余剰資金ができたタイミングで行いましょう。
定期的にライフプランの見直しをする
先ほどもお伝えしたように、住宅ローンの借り入れをする際には、ご自身やご家族のライフプランを考慮して計画を立てることが重要です。さらに、住宅ローンを無理なく返済し続けるためには、定期的なライフプランの見直しも大切だといえます。特に大きな出費がある場合は、必要な時期に向けてあらかじめ準備しておく必要があるでしょう。
例えば、住宅の修繕費や車の買い替え、子どもの教育・進学費用、両親の介護費用などには、まとまったお金が必要になります。しかし、車の故障や両親の介護は正確な時期が決まっているものではありません。
予想していた時期よりも早くなることもあれば、遅くなることもあり、ケガや病気などの予想していなかった急な出費が発生する可能性もあります。
住宅ローンの返済を続けていくためにも、家計やライフプランを定期的に見直し、状況を考えながら繰り上げ返済や借り換えなども視野に入れてください。
住宅ローンと年収に関する注意点
住宅ローンを借り入れるためには、金融機関の審査に通る必要があります。住宅ローンの審査基準の1つとして年収が挙げられますが、その他の条件も考慮して総合的に判断されることに注意しましょう。
また、住宅ローンの「借入可能額」と「無理なく返済できる金額」は同じではありません。同じ年収の人であっても、年齢や家族構成、生活スタイル、ご自身やご家族のライフプランなどによって「無理なく返済できる金額」は大きく異なります。
住宅ローンは借入金額が大きく長期にわたって返済することになるため「無理なく返済できるか」という視点から借り入れを検討していくことが非常に重要です。年収だけにとらわれず「返済」に焦点を当てて計画を立てていきましょう。
亀梨 奈美(かめなし なみ)/住宅ローンアドバイザー
大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。