最終更新日: 2024年11月29日
住宅ローン控除とふるさと納税は、最大限にメリットを享受したい制度です。ただ、両制度は併用できるものの、住宅ローン控除の金額が減ってしまうケースがあります。
本記事では住宅ローン控除とふるさと納税の併用のポイントや注意点を解説します。またシミュレーションで損をするケースを紹介しますので、参考にしてください。
【目次】
住宅ローン控除とふるさと納税は併用できる?
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する際のポイント
住宅ローン控除とふるさと納税を併用するシミュレーション
住宅ローンの仕組みとふるさと納税について理解し、減税制度をうまく活用しよう
住宅ローン控除とふるさと納税は併用できる?
最初に、住宅ローン控除とふるさと納税の基本を確認しておきましょう。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は個人が住宅ローンを利用してマイホームを取得したときに、所得税の税額控除が受けられる制度です。控除額は年末のローン残高に所定の控除率を掛けて計算します。所得税から控除しきれなかった分は、住民税から控除される仕組みです。
住宅ローン控除は所得税や住民税の税額から直接差し引かれるため、節税効果の高い制度です。
住宅ローン控除は2022年の税制改正大綱によって控除率が1.0%から0.7%に縮小されました。また借入限度額は住宅の種類、居住年ごとに変更されています。
住宅の種類\居住年 | 2022年~2023年入居 | 2024年~2025年入居 |
長期優良住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |
4,000万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 |
3,000万円 |
その他の住宅(一般住宅) | 3,000万円 |
0円 |
出典:国税庁「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
所得税から控除しきれなかった控除可能額を住民税から差し引く場合、所得税の課税総所得金額等の5%以下(最高9万7,500円)が上限です(居住年が2022年から2025年の場合)。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄附し、寄附金のうち2,000円を超える部分は所得税の還付や住民税の控除が受けられる制度です。
例えば、ある自治体に1万円寄附した場合、確定申告などの手続きをすれば8,000円は税金から控除され、寄附先からは返礼品がもらえます。つまり税金が安くなるのでなく、実質2,000円の自己負担で返礼品がもらえる点が寄附する人の利益です。
なお、控除される寄附金額には、収入や家族構成に応じた上限があります。上限を超えた寄附をすると、超えた分の控除は受けられません。また、自分の住む自治体に納税しても返礼品はもらえないので注意しましょう。
確定申告とワンストップ特例制度
ふるさと納税の適用を受ける方法には、「確定申告」と「ワンストップ特例制度」があります。
ワンストップ特例制度は、特例の適用に関する申請書を寄附先に送るだけで寄附金控除が受けられる制度です。その年の寄附先が5自治体以内であれば利用でき、確定申告の必要がありません。
ただし、利用できるのは、勤務先で年末調整が受けられる会社員や公務員のみです。自営業者やフリーランスなど確定申告が必要な人は利用できません。
2つは併用できる?
住宅ローン控除とふるさと納税は併用できます。住宅ローン控除を適用しても控除しきれない所得税・住民税が残る場合、ふるさと納税による控除のメリットがあります。
ただし、併用する際には気を付けなければならないポイントがあります。その内容を次でお伝えします。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する際のポイント
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合、住宅ローン控除の控除額が少なくなるケースがあります。ここからは、両制度を効果的に併用するためのポイントを解説します。
納税している分しか控除できない
ふるさと納税と同様に、住宅ローン控除にも控除の上限があります。さらに住宅ローン控除では、自分が支払った税額以上には控除できません。
例えば、ローン残高3,000万円で控除率0.7%なら21万円をその年支払った税額から差し引けます。しかし、支払った税額が15万円であれば戻ってくるのは15万円であり、21万円ではありません。
確定申告をする場合は住宅ローン控除に影響があることも
住宅ローン控除とふるさと納税を併用し、確定申告した際の控除の計算の流れは以下のとおりです。
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所得税の計算で、住宅ローン控除より先にふるさと納税の寄附金控除が行われます。その結果、所得税が少なくなり、税額から直接差し引く住宅ローン控除の金額も減ります。
所得税で控除しきれない金額を住民税から差し引く場合、住宅ローン減税の住民税からの控除上限を超えると控除できなくなるのです。
ワンストップ特例制度の利用がおすすめ
確定申告でふるさと納税を適用すると所得税と住民税から控除を受けますが、ワンストップ特例制度では控除対象は住民税のみとなります。そのため所得税の住宅ローン控除額を減らすことなく、ふるさと納税の控除も受けられます。
確定申告をするとワンストップ特例制度は利用できない
ワンストップ特例制度は、確定申告をすると適用されません。寄附先にワンストップ特例の申請書を送って確定申告をした場合、ワンストップ特例の申請は効力を失います。確定申告でふるさと納税の寄附金控除を申告しなければなりません。
特に注意が必要なのは、住宅ローン控除の1年目です。会社員でも住宅ローン控除の初年度は確定申告をしなければなりません。そのため、ワンストップ特例を利用できないのです。
その他、以下のように確定申告が必要な人はワンストップ特例制度を利用できません。
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ワンストップ特例制度を利用できない人の確定申告については、以下の記事を参考にしてください。
住宅ローン控除申請は「確定申告」と「年末調整」のどっち?手続きはどうする?
住宅ローン控除とふるさと納税を併用するシミュレーション
実際にふるさと納税と住宅ローン控除を併用した場合の、確定申告利用とワンストップ特例制度利用の住宅ローン控除額を試算してみましょう。
【前提条件】 | |
年収 |
500万円 |
配偶者の有無 |
独身 |
ふるさと納税寄附上限額 |
6万1,000円 |
住宅ローン控除率 | 0.7% |
住宅ローンの年末残高 | 4,000万円(住宅ローン控除上限28万円) |
所得税額 | 14万円(税率10%) |
住民税額 |
25万円 |
居住開始年 | 2022年 |
確定申告を利用するケース
確定申告によってふるさと納税の寄附金控除を適用する場合、住宅ローン控除額は以下になります。
【ふるさと納税をしない場合の住宅ローン控除額】
所得税額からの住宅ローン控除額は14万円です。控除上限からの残り14万円のうち、住民税から控除できるのは上限額の9万7,500円です。
よって、この場合の住宅ローン控除額は23万7,500円となります。
【ふるさと納税をした場合の住宅ローン控除額】
ふるさと納税の所得税からの控除額の計算式は以下のとおりです。
「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率」=所得税からの控除額 |
このケースでふるさと納税を上限の6万1,000円行った場合、所得税から控除される金額は5,900円(5万9,000円×10%)です。よって所得税額は13万4,100円となり、控除上限からの残りは14万5,900円となります。
住民税から控除できるのは9万7,500円で、住宅ローン控除額は23万1,600円です。つまり、ふるさと納税の所得税からの控除分を住宅ローン控除から差し引けなくなり、損をしてしまうのです。
ただし、ふるさと納税で確定申告を選ぶと必ず損をするわけではありません。個々のケースは「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率」で試算してみてください。
住宅ローン控除とふるさと納税の控除後の住民税額は以下のようになります。
控除前の住民税額-住宅ローン控除の住民税分-ふるさと納税の住民税分の控除=住民税額25万円-9万7,500円-(5万9,000円-5,900円)=9万9,400円 |
ワンストップ特例制度を利用するケース
ふるさと納税で利用する場合、全額住民税からの控除となります。よって、住宅ローン控除の金額は「ふるさと納税をしない場合の住宅ローン控除額」と同じ23万7,500円です。
ふるさと納税の控除後の住民税額は以下のようになります。
控除前の住民税額-住宅ローン控除の住民税分-ふるさと納税の控除全額=住民税額25万円-9万7,500円-5万9,000円=9万3,500円 |
住宅ローンの仕組みとふるさと納税について理解し、減税制度をうまく活用しよう
住宅ローン控除とふるさと納税は併用が可能です。しかし、確定申告ではふるさと納税が先に所得税から控除されるため、住宅ローンの控除額が減る可能性があります。
ただし、ワンストップ特例制度を利用すれば、ふるさと納税が住民税より差し引かれ、住宅ローンの控除額を減らすことなく所得税を控除できます。両制度の仕組みを理解し、メリットのある方法で減税しましょう。