最終更新日: 2024年11月29日

人生最大の買い物といわれる「マイホーム」。新築物件・中古物件を問わず、住宅購入の際には、ほとんどの方が住宅ローンを利用されます。そんな住宅ローンにおいて、一番に検討する事項は月々の返済額ではないでしょうか?
そこでこの記事では、住宅ローンの月々の返済額の決定要因や返済額の基準となる指標など、月々の返済額を決めるうえでの注意点を、実際の借入額シミュレーションを折り混ぜながらご紹介します。

【目次】
住宅ローンの月々の返済額はどうやって決まる?
住宅ローンの月々の返済額は何を基準に考えれば良い?
【月々の返済額別】住宅ローンの借入額シミュレーション
住宅ローンの月々の返済額を決めるうえでの注意点
住宅ローンの月々の返済額はゆとりをもって夢のマイホーム生活の実現しましょう

住宅ローンの月々の返済額はどうやって決まる?

住宅ローンの月々の返済額はどのように決まるのでしょうか?ここでは、主な4つの要素をわかりやすく解説します。

金利

 住宅ローンの金利タイプには、おおまかに「変動金利」と「固定金利」があります。ざっくりいうと変動金利は短期金利(主に日銀の金融政策の動向)、固定金利は長期金利(主に新発10年国債利回り)にそれぞれ影響を受けます。変動金利、固定金利のいずれも金利が高くなるほど月々の支払い額は多くなり、総返済額も増えます。

<具体的試算の例>
返済方式:元利金等返済
ローン借入期間:30年
ローン借入金額:3,000万円
※金利はローン借入期間一定とする
※住宅購入にかかる諸費用は考慮しない

○金利:1.5%の場合
毎月の返済額=103,536円
総支払額=37,272,960円

○金利1.2%の場合
毎月の返済額=99,272円
総支払額=35,737,920円

金利1.5%との毎月の返済額の差=-4,264円
金利1.5%との総支払額の差=-1,535,040円

○金利1.0%の場合
毎月の返済額=96,491円
総支払額=34,736,908円

金利1.5%との毎月の返済額の差=-7,045円
金利1.5%との総支払額の差=-2,536,200円
金利1.2%との毎月の返済額の差=-2,781円
金利1.2%との総支払額の差=-1,001,160円

返済期間

返済期間が長くなるほど、月々の返済額は少なくなります。ただし、総返済額は返済期間を伸ばすほど多くなる点に注意が必要です。

<具体的試算の例>
返済方式:元利金等返済
金利:1.0%
ローン借入金額:3,000万円
※金利はローン借入期間一定とする
※住宅購入にかかる諸費用は考慮しない

○返済期間30年の場合
毎月の返済額=96,491円
総支払額=34,736,908円

○返済期間40年の場合
毎月の返済額=75,856円
総支払額=36,410,880円

返済期間30年との毎月の返済額の差=-20,635円
返済期間30年との総支払額の差=+1,673,972円

返済方式

返済方式には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つの方式があります。

元利均等返済は毎月の返済額が一定となる返済方式です。メリットとしては、毎月の返済額が固定されるため、月々の返済計画(ライフプラン)を考えやすい点が挙げられます。一方、デメリットは元金均等返済よりも返済総額が多くなることです。

元金均等返済は毎月の返済額のうち、元金部分が一定となる返済方式です。メリットとしては、ローン借入期間において金利が変わらない場合、総額で支払う利息は元利均等返済に比べて少なくなります。また、返済を続けるごとに月々の支払額が減っていくことも元金均等返済の利点です。ただし、元金に利息が上乗せされるため、当初の返済額が多くなる点はデメリットと言えるでしょう。

<具体的試算の例>
ローン借入期間:30年
ローン借入金額:3,000万円
金利:1.0%
※金利はローン借入期間一定とする
※住宅購入にかかる諸費用は考慮しない

○元利均等返済の場合
初月の元金返済額=71,491円
初月の利息返済額=25,000円
初月の毎月返済額=96,491円
総支払額=34,736,908円

○元金均等返済の場合
初月の元金返済額=83,333円
初月の利息返済額=25,000円
初月の毎月返済額=108,333円
総支払額=34,512,340円

元利均等返済との初月の返済額の差=+11,842円
元利均等返済との総支払額の差=-224,568円

ボーナス払いの有無

 ボーナス払いとは毎月の返済とは別に、主に年2回、6ヶ月ごとに追加で元金を返済することです。ボーナス払いを利用すると毎月の返済額を下げられます。

<具体的試算の例>
返済方式:元利金等返済
ローン借入期間:30年
ローン借入金額:3,000万円
金利:1.0%
※金利はローン借入期間一定とする
※住宅購入にかかる諸費用は考慮しない

○ボーナス払いなしの場合
毎月返済額=96,491円

○ボーナス払いありの場合(年間40万円のボーナス払い)
毎月返済額=48,245円

ボーナス払いなしとの毎月の返済額の差=-48,246円

住宅ローンの月々の返済額は何を基準に考えれば良い?

ここでは、住宅ローンの月々返済額を決める際に指標となる考え方を4つ解説します。

現在の家賃額と比べる

 支払っている家賃額がひとつの基準になります。現在の家賃の支払いを負担に感じている場合、月々の返済額は家賃よりも下げることが望ましいでしょう。また、住宅を購入すると住宅ローンの返済だけではなく、固定資産税の支払いやメンテナンス費用・管理費などが発生します。

このことから、家賃の支払いが負担に感じていない場合でも、家賃額と月々の住宅ローンの返済額を同じにすると、住居に対するコストの分、毎月の支出は多くなります。毎月の返済額を決める際は、住宅ローン以外にも費用が発生することを認識しておくのが重要です。

月収や年収に対する返済負担率で考える

 返済負担率とは、収入に対する返済額の割合を指します。住宅ローン以外の借り入れも計算対象に含まれ、返済負担率は金融機関が行う融資審査の評価指標のひとつとしても用いられています。

返済負担率が高いと収入に対して返済額が多いことを意味しており、家計を圧迫しやすい状態といえます。一般的には返済負担率を収入の25%以内に収めることが望ましいとされており、月収や年収に対して返済負担率を25%以内としたときに、住宅ローンの月々の返済額をどれくらいにするのかを考えると良いでしょう。そして、返済負担率の分母となる収入については額面ではなく手取りで考えることで、より現実的な返済額が見えてくるはずです。

毎月の収支バランスを考慮する

 毎月の収入から必要な生活費や貯蓄額などを除いたときに、毎月何万円までなら支払えるかを考えます。考え方のポイントとして、生活水準を必要以上に落とさず支払える金額にすることが望ましいです。その理由は、生活費を削りすぎたがゆえに生活の質が落ち、暮らしの満足度が低下したといったケースが散見されるためです。

将来のライフプランから逆算する

 ここまでは「現在」の視点で指標となる考え方を解説してきましたが、異なるアプローチにより指標を見出すことも可能です。それは、「将来」からの逆算です。

つまり、将来のライフイベントを設計し、必要な貯蓄額を用意するためにどのくらいの返済額に抑えるかを考えてみる、ということです。必要な貯蓄額は漠然とした額ではなく、たとえば、子どもの教育費や結婚、家のリフォーム、旅行など具体的なライフイベントとして落とし込んでみることが重要です。

住宅ローンは長期にわたって返済を続けることになります。必要な貯蓄額を用意するためには、住宅ローンの返済計画の目安をしっかりと立てることが必要です。

【月々の返済額別】住宅ローンの借入額シミュレーション

 

ここでは実際に月々の返済額、金利、返済期間別のシミュレーションから、借入額の違いを見ていきましょう。

月々の返済額:7万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%1,973万円2,339万円2,696万円
1%1,857万円2,176万円2,479万円
1.5%1,750万円2,028万円2,286万円
2%1,651万円1,893万円2,113万円
2.5%1,560万円1,771万円1,958万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を7万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:8万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%2,255万円2,673万円3,081万円
1%2,122万円2,487万円2,834万円
1.5%2,000万円2,318万円2,612万円
2%1,887万円2,164万円2,415万円
2.5%1,783万円2,024万円2,237万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を8万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:9万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%2,537万円3,008万円3,467万円
1%2,388万円2,798万円3,188万円
1.5%2,250万円2,607万円2,939万円
2%2,123万円2,434万円2,716万円
2.5%2,006万円2,277万円2,517万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を9万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:10万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%2,819万円3,342万円3,852万円
1%2,653万円3,109万円3,542万円
1.5%2,500万円2,897万円3,266万円
2%2,359万円2,705万円3,018万円
2.5%2,229万円2,530万円2,797万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を10万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:11万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%3,101万円3,676万円4,237万円
1%2,918万円3,419万円3,896万円
1.5%2,750万円3,187万円3,592万円
2%2,595万円2,976万円3,320万円
2.5%2,451万円2,783万円3,076万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を11万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:12万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%3,383万円4,010万円4,622万円
1%3,184万円3,730万円4,251万円
1.5%3,000万円3,477万円3,919万円
2%2,831万円3,246万円3,622万円
2.5%2,674万円3,037万円3,356万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を12万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

月々の返済額:13万円

金利借入額
(返済期間25年)
借入額
(返済期間30年)
借入額
(返済期間35年)
0.5%3,665万円4,345万円5,007万円
1%3,449万円4,041万円4,605万円
1.5%3,250万円3,766万円4,245万円
2%3,067万円3,517万円3,924万円
2.5%2,897万円3,290万円3,636万円

※返済方式:元利均等返済、金利タイプ:全期間固定金利、ボーナス払い:なし、月々の返済額を13万円とし、金利(0.5%〜2.5%)、返済期間(25年〜35年)での借入額をシミュレーション。
【フラット35】のシミュレーションページを使用)

住宅ローンの月々の返済額を決めるうえでの注意点

 

最後に、住宅ローンの月々の返済額を決めるうえでの注意点を解説します。

無理なく返せる金額に留める

 毎月の返済額を決める際は、長期的に安定して返済を続けられる金額にすることが重要です。さらに、生活費からの捻出を前提としないこと。これは暮らしの満足度低下につながる要因となり、ひいては住宅購入が生活を苦しくするという本末転倒な事態となります。

また、ボーナスは確定している収入ではないため、当てにしすぎるのは好ましくないといえます。暮らしの質を下げることのない範囲で、月々無理なく返せる金額に留めることが重要です。

支払える金額を勘で決めない

 まず、現在の収入と支出を整理することから始めましょう。収入は項目が少ないため、比較的把握しやすいものです。しかし、支出となると項目が多く、なかなか整理ができていないのが実情ではないでしょうか。

食費や衣服費、水道光熱費、通信費、交通費、娯楽費など毎月どのような費用がどの程度平均的に発生しているかを洗い出してみましょう。支出を整理することで無駄が見えるようになり、家計の見直しにもつながります。長期的な資金繰り表を作成したうえで返済額を決めると安心です。

住宅ローンの月々の返済額はゆとりをもって夢のマイホーム生活の実現しましょう

住宅ローンの返済は短期的なものではなく、何十年という長期間にわたって続きます。そのため、住宅ローンの返済は長く家計に影響を与えます。毎月の生活を圧迫しないためにも、無理のない返済金額の設定が重要です。

また、現金の準備に余裕ができれば、自己資金を繰り上げ返済に充てることで総支払額を抑えられます。収入と毎月の支出(出費)との収支バランスを考え、無理なく、かつ、ゆとりをもって返済できる金額を設定していきましょう。

投稿者

  • 山田浩

    1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP認定者。
    青山学院大学卒業後、大手ゼネコン勤務を経てIT関連会社を設立。
    財務会計システムの上流工程エンジニアとして数多くのシステム構築を手掛ける。
    現在は、マネーコンサルティング業務にベクトルを傾け、パーソナルファイナンス研究事務所 & techの代表としてとして活動中。

    View all posts