住宅ローンの平均的な完済年齢│何歳までに払い終えるべき?

住宅ローンを何歳までに払い終えるかは悩ましいポイントといえるでしょう。完済時期を遅らせれば借入期間を長く取ることができ、借入額を増やせたり、月々の返済額を抑えられたりするメリットがあります。一方で、収入が減少する老後にローンが残れば家計の負担となり、老後資金が不足するリスクが高まるというデメリットも伴います。この記事では、住宅ローンの平均的な完済年齢と、完済年齢(借入期間)を設定する際のポイントについて解説します。

【目次】
住宅ローンの完済年齢の平均は?
住宅ローンの完済年齢の考え方
完済年齢を基準とした住宅ローンの借入額の目安
ライフプラン実現と老後の返済リスクとのバランスを考慮した返済計画を

住宅ローンの完済年齢の平均は?

住宅ローンは何歳までに完済する人が多いのでしょうか。今回は住宅金融支援機構の調査データを基に、住宅ローンの完済年齢を推測します。

住宅ローンの完済年齢の平均

住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」によると、【フラット35】を除く住宅ローンの貸出期間(借入期間)は、25年超30年以下の割合が最も高く(44.4%)、平均は27.0年となっています(2019年度新規貸出分)。

これに対し、完済までの期間は10年超15年以下の割合が最も高く(43.2%)、平均は16.0年となっています。借入期間との差は11年あり、一旦完済して新たに借り入れを行う「借り換え」や「繰上返済」により、実際には当初の借入期間よりも前倒しで完済されるケースが多いことが読み取れます。

参考:住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」

また、住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」によると、【フラット35】の償還期間(借入期間)の平均は32.9年(中央値は35.0年)となっています。【フラット35】利用者の多くが借入期間を35年に設定しているため、一般の住宅ローンに比べて借入期間は長い傾向があります。

同調査によると、【フラット35】利用者の借入時の平均年齢は40.2歳(中央値38.0歳、いずれも2019年度分) となっています。完済年齢を借入時の年齢に借入期間を加えたものとすれば、借入期間を平均値の32.9年とした場合で73歳前後、中央値の35年とした場合で75歳前後となります。

完済までの期間が当初借入期間よりも10年程度短いという調査結果を踏まえれば、実際には30代〜40代で借り入れ、60代〜70代の間に完済している人が多いと推測されます。

また、近年は完済年齢の上昇傾向がみられます。この要因としては、晩婚化に伴う住宅購入の遅れや、不動産価格上昇による借入額(融資額)の増加、退職年齢の上昇などが考えられます。

<【フラット35】利用者の完済年齢等の変化>

2003年度 2020年度(上期)
借入時平均年齢 37 40
平均借入額(融資額) 1,900万円 3,100万円
平均借入期間 30 33
平均完済年齢※
(借入時の平均年齢+平均借入期間)
68 73
60歳時点の借入残高 700万円 1,300万円

出所:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」日本経済新聞「長寿社会のリアル〜住宅ローン、定年後に遠のく完済への道(2020年10日4日)」 より筆者作成(※繰上返済が考慮されていないため、実際よりも高くなっている可能性があります)

住宅ローンの完済年齢に制限はある?

金融機関の多くは、申込時だけなく完済時の年齢制限を設けており、年齢によっては借入期間が制限されます。

完済時の上限年齢は金融機関により異なりますが、おおむね80歳が上限となっています。最近では完済年齢の基準を引き上げる動きもあり、上限年齢を85歳とする金融機関も出始めています。

住宅ローンの完済年齢の考え方

完済年齢を遅く設定すれば、購入できる住宅や返済計画の選択肢は広がります。一方で高齢になり収入が減少しても返済が残るリスクには十分注意しなければなりません。

安定収入を得られているうちに完済するのが望ましい

退職後、多くの人は収入が減少し、年金や貯蓄で生活していくことになります。そのため、住宅ローンの支払いが残っていると、家計の圧迫につながります。老後資金が不足してしまう事態を避けるためにも、安定収入を得られているうちに住宅ローンを完済できるような返済計画を立てることが望ましいでしょう。

ただし返済期間を短く設定すれば、月々のローン支払額は増えるため、家計や他の資金計画に支障をきたすおそれもあります。ローン返済と教育費のかさむ時期が重なってしまうケースでは、あえて返済期間を長めに設定して月々のローン支払額を抑え、教育費のピークが過ぎてから繰上返済を行い、返済期間を短縮するといった方法を検討すると良いでしょう。

定年後も返済が続く場合はできるだけ早期の完済を心がける

退職後の負担をできるだけ抑えるには、退職金などの資金を使って繰上返済を行い、借入期間を短縮するのが有効な方法です。退職金を返済に充てる場合は、受け取れる見込額とローン返済に充てられる金額を把握しておきましょう。ただし、退職金は金額が変動したり、転職などで受取れなくなったりするおそれがあり、当てにし過ぎるのは禁物です。

繰上返済は退職金のようにまとまった金額でなくとも構いません。家計に余裕ができたタイミングで少しずつ繰上返済を行い、なるべく70歳までには完済したいところです。

リースバックやリバースモーゲージを活用する

自宅を子供に残す必要がない場合には、「リースバック」や「リバースモーゲージ」を活用する選択肢もあります。

リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却後、賃貸契約を結んで家賃を支払い、そのまま一定期間自宅に住み続ける方法のことです。ローンが残っている場合は売却代金で完済し、残ったお金は家賃や生活費など自由に使えます。

リースバックには、ローンの利息や物件の所有に伴う税金、修繕費などの負担がなくなり、手元に現金を確保できるといったメリットがあります。一方で自宅に住み続ける間は家賃の支払いが必要です。また売却価格が相場よりも低かったり、家賃が相場より高かったりするケースもあり、売却する業者や条件は慎重に検討し、利用を判断しなければなりません。なお、売却代金がローン残高を下回る、いわゆる「オーバーローン」の状態では利用できないため注意が必要です。

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして借り入れを行い、毎月利息のみを払いながら自宅に住み続ける方法のことです。借り入れた元金は、借入人が死亡した際に現金で一括返済するか、自宅を売却して返済します。借り入れた資金で住宅ローンを完済すれば、その後はリバースモーゲージの利息のみの支払いになるため、手元資金の減少ペースを抑えられるメリットがあります。

完済年齢を基準とした住宅ローンの借入額の目安

いくらの借り入れなら一定の年齢までに完済できるのか、完済年齢(借入期間)と月々の返済額、借入金利から、借入可能額を逆算して確認してみましょう。今回は以下のような条件で試算します。

<計算条件>
申込時年齢:40歳
金利:全期間固定金利
返済方式:元利均等返済
ボーナス払い:なし
住宅金融支援機構ローンシミュレータにより筆者試算

完済時年齢75歳(借入期間35年)

金利1 金利1.5 金利2
月返済額7万円 2,479万円 2,286万円 2,113万円
月返済額8万円 2,834万円 2,612万円 2,415万円
月返済額9万円 3,188万円 2,939万円 2,716万円
月返済額10万円 3,542万円 3,266万円 3,018万円
月返済額11万円 3,896万円 3,592万円 3,320万円
月返済額12万円 4,251万円 3,919万円 3,622万円

完済時年齢70歳(借入期間30年)

金利1 金利1.5 金利2
月返済額7万円 2,176万円 2,028万円 1,893万円
月返済額8万円 2,487万円 2,318万円 2,164万円
月返済額9万円 2,798万円 2,607万円 2,434万円
月返済額10万円 3,109万円 2,897万円 2,705万円
月返済額11万円 3,419万円 3,187万円 2,976万円
月返済額12万円 3,730万円 3,477万円 3,246万円

完済時年齢65歳(借入期間25年)

金利1 金利1.5 金利2
月返済額7万円 1,857万円 1,750万円 1,651万円
月返済額8万円 2,122万円 2,000万円 1,887万円
月返済額9万円 2,388万円 2,250万円 2,123万円
月返済額10万円 2,653万円 2,500万円 2,359万円
月返済額11万円 2,918万円 2,750万円 2,595万円
月返済額12万円 3,184万円 3,000万円 2,831万円

完済時年齢60歳(借入期間20年)

金利1 金利1.5 金利2
月返済額7万円 1,522万円 1,450万円 1,383万円
月返済額8万円 1,739万円 1,657万円 1,581万円
月返済額9万円 1,956万円 1,865万円 1,779万円
月返済額10万円 2,174万円 2,072万円 1,976万円
月返済額11万円 2,391万円 2,279万円 2,174万円
月返済額12万円 2,609万円 2,486万円 2,372万円

以上の試算から、借入金利と毎月の返済額が同じでも、完済年齢(借入期間)によって借入可能額に大きな差がつくことが分かります。頭金をいくら用意できるか、収入に対していくらまでなら無理なく返済できるかによっても、借入可能額や購入できる物件の価格は左右されます。

ライフプラン実現と老後の返済リスクとのバランスを考慮した返済計画を

住宅購入年齢や退職年齢、不動産価格の上昇により、住宅ローンの完済年齢も近年上昇傾向にあります。借入時点での完済予定年齢の平均は70歳を超え、完済年齢の上限を引き上げる動きも見られます。

完済年齢(借入期間)を長めに設定すれば、借入可能額が増え、月々の返済額を抑えられます。これにより、購入できる物件の選択肢が増える、家計のやりくりやライフプラン実現に必要な費用を捻出しやすくなるといったメリットを期待できます。

一方で、元金返済ペースの遅れによる利息の増加や老後の返済リスクには十分注意しなければなりません。繰上返済による完済時期の前倒しやリースバックの活用など、老後に過度な負担を残さない対策が必要です。

ライフプラン実現と老後の返済リスクとのバランスを考え、借入期間全体を通して無理なく返済が続けられる返済計画をしっかり練りましょう。

監修

竹国 弘城(たけくに ひろき)/1級FP技能士、 CFP認定者

証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングや執筆活動などを行う。

 

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