最終更新日: 2024年11月29日
住宅ローンには、保証会社の保証を利用するものと、利用しないものがあります。保証の有無によって、住宅ローンにどのような違いがあるのでしょうか。そもそも保証会社とは何をする会社なのか、保証会社の役割からご説明します。
【目次】
住宅ローンにおける保証会社の役割
保証会社の保証あり・なしによる住宅ローンの違い
住宅ローンの保証会社・保証料についての気になる疑問
住宅ローンは保証会社の保証の有無による違いを踏まえて
住宅ローンにおける保証会社の役割
まずは住宅ローンにおいて保証会社がどのような役割を担っているのかをご紹介します。
保証会社の役割
保証会社は、金融機関が扱う住宅ローンなどの「信用保証業務」を行う会社であり、主に「保証審査」と「保証履行」の2つの役割があります。
- 保証審査
保証審査とは、申込者の返済能力や購入する物件の担保価値などから保証を引き受けるか判断することをいいます。保証会社を利用する住宅ローンでは、実質的な審査は保証会社が行い、保証の引き受け可否が融資自体の審査結果に影響します。
- 保証履行
保証履行とは、住宅ローン契約者が返済できなくなったローン債務を、一時的に肩代わり(代位弁済)することをいいます。契約者が保証料を支払うことで、保証会社は保証人としての役割を担います。
保証会社の保証は金融機関のためのもの
注意しておきたいのは、保証会社の保証は金融機関のためのもので、契約者のための保証ではないという点です。
金融機関には貸し出した資金を回収できないリスクがあります。住宅ローンの返済が滞った場合、契約者に代わって金融機関に返済を行い、金融機関が貸し出した資金を確実に回収できるようにするのが保証会社の役割です。
保証会社の返済により、金融機関に対するローン債務はなくなりますが、債権者が保証会社に変わるだけであり、契約者の住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
保証会社が肩代わりしたローン債務は、話し合いによって分割支払いが認められるケースもありますが、一括で返済を請求されるケースが一般的です。手持ち資金がなければ、競売により住宅を売却するといった方法で返済資金を工面しなければなりません。
保証会社の種類
保証会社には、銀行子会社系、第二地銀系、信用金庫協会系、独立系などの種類があります。
- 銀行子会社系:メガバンクなど大手地銀が実質的な子会社として設立した保証会社
- 第二地銀系:第二地方銀行が地域毎に共同で設立した保証会社
- 信用金庫協会系:全国の信用金庫と信金中央金庫が共同で設立した保証会社(保証基金)
- 独立系:金融機関とは独立した立場の保証会社
利用する保証会社は金融機関が指定するため、住宅ローン利用者が自由に選択することはできません。どの保証会社を利用するかは、契約書やHP、パンフレットなどで確認できます。
保証会社の保証あり・なしによる住宅ローンの違い
保証会社の保証を利用するかは金融機関や住宅ローン商品ごとにあらかじめ決まっています。どの金融機関や住宅ローン商品を利用するかは、利用者が自由に選べますが、選んだ金融機関や商品で保証会社の保証を利用するかどうかは選べません。
保証会社の保証がある住宅ローンの特徴
保証会社の保証を利用するタイプの住宅ローンでは、保証料の支払いが必要になり、物件には保証会社の抵当権が設定されます。このタイプの住宅ローンは、「保証料型」ともいわれます。メガバンク(都市銀行)や地方銀行、信用金庫など、多くの金融機関では「保証料型」が主流です。
保証料の支払方法は2種類
保証料の支払い方法には、契約時に一括で支払う方法(外枠方式)と、借入金利に上乗せする形で、月々の返済額に含めて分割支払いする方法(内枠方式)があります。
<外枠方式>
外枠方式の保証料は、借入金額と融資期間に応じて計算されます。一括前払いとなるため、契約時の諸費用に含めて用意しなければなりませんが、月々の返済額を抑えられるメリットがあります。
<内枠方式>
内枠方式では、金利上乗せによる利息の増加分が保証料となります。月々の返済に含めての分割支払いとなるため、契約時にまとまったお金を用意しなくてよいメリットがあります。ただし、外枠方式と比べて総支払額は多くなる傾向があります。契約時にまとまった資金を用意するのが難しい人や、なるべく手元資金を残しておきたい人に向いている支払い方法です。
35年ローンの場合、保証料は外枠方式で「借入金額の2%程度」、内枠方式で「年0.2%程度の上乗せ」が相場です。保証料は保証会社により異なるほか、同じ保証会社でも、利用者の返済能力、物件の担保評価など、審査結果により保証料が変わる場合があります。
対象物件には保証会社の抵当権が設定される
住宅ローンの対象物件には、保証会社を第1順位の抵当権者とする抵当権が設定されます(第1順位に抵当権が設定されている物件に追加融資を受ける場合など、保証会社が第2順位となるケースもあります)。
抵当権とは、債務者(住宅ローン契約者)が借りたお金(住宅ローン)を返済できなくなった場合に備え、土地や建物を担保とする権利のことです。
抵当権の設定されている物件が競売などにより売却された場合、売却代金は抵当順位の高い抵当権者に優先して支払われます。売却代金から債権(貸したお金)を回収できるようにすることが抵当権設定の目的です。
保証会社の保証がない住宅ローンの特徴
保証会社を利用しないタイプの住宅ローンは保証料がかかりません。物件には借入先金融機関の抵当権が設定されます。このタイプの住宅ローンは、「融資手数料型」ともいわれます。ネット銀行の住宅ローンでは「融資手数料型」が主流です。そのほかの金融機関でも、インターネットで申し込み・手続きが完結する「ネット専用住宅ローン」などを中心に、融資手数料型の商品が増えています。
融資手数料が必要になる
保証会社を利用しないため保証料はかかりませんが、借入先金融機関に支払う「融資手数料」が必要になるケースが多いです。
融資手数料は金融機関や商品によって異なりますが、「借入金額の2%(税抜)」が相場です。同条件の保証料(外枠方式)と比較した場合、借入期間が短いほど、融資手数料が割高になる傾向があります。
保証料が不要だからといって、必ずしも費用が抑えられるとは限らないため注意しましょう。
融資手数料型の住宅ローンでは、金融機関がリスク負う
保証会社の保証が付かないため、契約者が返済できなくなった場合のリスクは金融機関が負うことになります。また、競売などの債権回収手続きも金融機関が行います。
住宅ローンの保証会社・保証料についての気になる疑問
住宅ローンの保証会社・保証料について、よくある疑問についてお答えします。
保証会社を使わない場合、保証人を立てる必要がありますか?
保証会社は保証人としての役割を担いますが、保証会社を利用しない住宅ローンでも、保証人は原則不要です。
例外として、ペアローンや収入合算を利用するとき、審査の結果、金融機関に必要と判断されたときなど、連帯保証人を求められるケースもあります。
保証会社を利用する際にも審査がありますか?
保証会社を利用する住宅ローンの場合、保証会社の保証を受けられることが借り入れ条件であり、保証審査に通らないと融資を受けられません。本審査に申し込めば同時に保証会社による審査も行われるため、利用者が別途審査を申し込む必要はありません。
繰上返済を行った場合、保証料は返金されますか?
契約時に保証料を一括で支払っている場合(外枠方式)は、繰上返済によって返済期間が短くなると、短縮された期間に応じて保証料の一部が戻ってくる場合があります。いくら戻ってくるかは、利用する金融機関・保証会社、短縮される返済期間によって異なります。
なお、融資手数料は繰上返済(借り換えを含む)によって返済期間が短縮されても返金されません。将来繰上返済や借り換えを検討している場合には、この点も考慮しておきましょう。
住宅ローンは保証会社の保証の有無による違いを踏まえて
保証会社には、住宅ローンの実質的な審査を行い、返済不能となった場合にローン契約者に代わって金融機関に返済を行う役割があります。この保証は金融機関のためのものであり、保証会社の利用を融資条件としている住宅ローンでは、必ず利用しなければいけません。
保証料を支払いたくない場合には、保証会社を利用しない「保証料不要」の住宅ローンを利用する選択肢もあります。ただし、そのような商品は融資手数料が必要なケースも多く、トータルで見ると必ずしも負担を抑えられるとは限りません。また、保証会社を利用する商品に比べて審査が厳しい傾向があり、融資手数料は繰上返済や借換えをしても返金されないという点にも注意が必要です。
保証会社の保証の有無による返済計画全体での費用負担の違いを踏まえ、複数の金融機関・商品を比較し、自身にとってより有利な選択をしましょう。