最終更新日: 2024年11月29日

住宅の購入は、人生の中でも大きな買い物となるでしょう。住宅ローンを利用して購入するケースがほとんどであり、借入金額が大きくなりやすいことから、住宅ローンの選び方も非常に重要なポイントとなっています。

そこで今回は、住宅ローンの選び方とチェックすべきポイントについて解説します。これから住宅ローンの借入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【目次】
住宅ローンの選び方①:金利タイプを比較する
住宅ローンの選び方②:住宅ローンの種類を比較する
住宅ローンの選び方③:住宅ローンの諸費用を確認する
住宅ローンの選び方④:団体信用生命保険の保障内容を確認する
住宅ローンの選び方⑤:その他
住宅ローンの選び方に関する注意点
住宅ローン選びで困ったときの相談窓口
住宅ローンの選び方を知り、ご自身に適したものを選択しよう

住宅ローンの選び方①:金利タイプを比較する

住宅ローンを選ぶ際に必ずチェックしておきたい項目の1つが、金利タイプです。住宅ローンの金利タイプは「変動金利型」「固定金利期間選択型」「全期間固定金利型」の3種類があります。ここでは、金利タイプ別にそれぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。

変動金利型

変動金利型は、市場金利の変動に伴い定期的に金利や返済額の見直しが行われる金利タイプです。返済の途中であっても金利が変動するため、借入時点では総返済額が確定しません。市場金利の影響を受ける特徴から、市場金利が下降局面であれば金利による恩恵を受けやすく、上昇局面では返済額が増える可能性があるリスクがあります。

ただし、市場金利の変動がすぐに適用金利や返済額に反映されるわけではありません。金利の見直しは半年ごと、返済額の変動は5年ごとに行われるのが一般的です。また、見直し後の返済額を「見直し前の1.25倍まで」と定めている金融機関も多くあります。

借入時点では他の金利タイプよりも金利が低く設定されているため、できる限り低金利で借り入れたい人や金利上昇リスクに備えられる人に向いている金利タイプだといえるでしょう。

固定金利期間選択型

固定金利期間選択型は、あらかじめ決められた期間の金利が固定されている金利タイプです。固定金利の期間が終わった後は、変動金利・固定金利いずれかを選択できたり、自動的に変動金利になったりするケースがあり、金融機関により異なります。固定金利期間選択型は、3年・5年・10年など複数の選択肢があるのが一般的です。

一定期間は金利が固定されているため、返済額が変わらないのがメリットの1つ。しかし、固定金利期間終了後に市場金利が上昇していれば返済額が増加するデメリットもあります。子どもの進学費用など大きな支出を控えていて返済額が増加するリスクを抑えたい人などに向いている金利タイプだといえるでしょう。

全期間固定金利型

全期間固定金利型は、完済まで借入時点の金利が変わらない金利タイプです。市場金利の影響を受けずに金利が固定されるため、借入時点で総返済額が確定します。返済額が変わらないことから、住宅ローンの返済を含めたライフプランを立てやすいメリットがあります。

一方で、借入時点での金利は他の金利タイプよりも高めに設定されているのが一般的です。また、市場金利が下降局面でも恩恵を受けにくいデメリットも。全期間固定金利型は、金利上昇リスクに対応しにくい人や、小さいお子さんがいて将来かかる教育費などの予測がしにくい人などに向いているといえるでしょう。

住宅ローンの金利タイプについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

住宅ローンで選べる金利のタイプとは?それぞれの特徴から選び方を解説

住宅ローンの選び方②:住宅ローンの種類を比較する

住宅ローンの代表的な種類には、「民間ローン」「公的ローン」「【フラット35】」の3種類があります。ここでは、それぞれの特徴を解説していきます。

民間ローン

民間ローンは、民間の金融機関が提供している住宅ローンのことをいいます。メガバンク・地方銀行・信用金庫・ネット銀行など、住宅ローンを提供する金融機関によって借入条件やサービスなどが異なることが特徴です。たとえば、金利タイプの選択肢や審査基準、独自のサービス内容など。また、民間ローンの場合は、団体信用生命保険への加入が必須となることがほとんどです。さらに、諸費用の項目や金額も金融機関によって異なるため、民間ローンを選ぶ際には複数の金融機関を比較検討することをおすすめします。

公的ローン

公的ローンとは、自治体など公的機関の融資制度のことをいいます。すべての自治体が提供しているわけではなく、自治体によって融資を受けられる対象者や金額、借入期間などの条件が異なります。一定期間、該当の自治体に居住していることや勤務していることなどの条件があるのが一般的です。自治体と民間金融機関が提携してローンを提供しているところもあります。

また、財形貯蓄制度のある企業に勤めている場合は「財形住宅制度」も検討できるでしょう。財経住宅制度とは、マイホーム購入やリフォームといった住宅資金を目的として積み立てできる制度です。利用するには一定の条件をクリアしなければならないため、詳しくは勤務先や契約先の金融機関などに確認してみてください。

【フラット35】

【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資を行っている住宅ローンです。住宅金融支援機構は、もともと国土交通省と財務省が所管していた住宅金融公庫が母体の独立行政法人。借り入れる際の窓口は、提携先の民間金融機関です。

【フラット35】の大きな特徴は、最長35年にわたる全期間固定金利型の住宅ローンであること。保証人が不要であることや団体信用生命保険への加入が任意であることも、民間金融機関が提供する一般的な住宅ローンとは異なる特徴です。

金利変動リスクが気になる人や団信への加入に不安を感じている人は、【フラット35】が選択肢の1つとなりやすいでしょう。

【フラット35】についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【フラット35】とは?基礎知識から利用のポイントまでわかりやすく解説

住宅ローンの選び方③:住宅ローンの諸費用を確認する

住宅ローンの借入にあたっては、諸費用がかかります。そのため、住宅ローンを選ぶ際には諸費用も含めた総額を比較検討すると良いでしょう。ここでは、住宅ローンの借り入れ時にかかる主な諸費用をご紹介します。

保証料

保証料は、万が一住宅ローンの返済が滞った場合、代わりに金融機関に返済してもらう保証会社に支払う手数料です。住宅ローンを提供している金融機関には、様々な事情により住宅ローン契約者から貸し出した資金を回収できなくなるリスクを抱えています。住宅ローン契約者が保証会社と保証契約を結ぶことにより、金融機関は貸し倒れリスクに対応しているのです。

なお、保証会社が代わりに返済するからといって、住宅ローン契約者の債務がなくなるわけではありません。返済先が金融機関から保証会社に変わるだけで、引き続き返済を続けていく必要があります。

保証料の支払い方法は、金利に上乗せされたり借り入れ時に一括で支払ったりするなど、金融機関によって様々です。借入金額などの条件によっても異なりますが、数十万円程度かかることが多くあります。諸費用の中でも高額になりやすい項目であることから、事前にきちんと調べておきましょう。【フラット35】のように、保証人不要で保証料がかからない住宅ローンもあります。

融資手数料

融資手数料とは、住宅ローンを貸し出す金融機関に支払う手数料のこと。新規借入や他の金融機関からの借り換えで必要な事務手続きなどにかかる手数料であることから、「融資事務手数料」「事務取扱手数料」などの名称が使われることがあります。

融資手数料には、借入金額に対して一定の手数料率をかけて計算される「定率型」と、借入金額に関わらず手数料が一定である「定額型」の2種類があります。融資手数料は金融機関によって異なるため、詳しく知りたい方は金融機関にシミュレーションを依頼してみましょう。

登記費用

住宅の取得にあたっては、土地・建物に対して抵当権を設定したり、所有権の保存・移転の登記をしたりする必要があります。これは司法書士という登記の専門家に依頼するのが一般的であるため、登記費用には国に納める登録免許税と司法書士に支払う報酬が含まれています。事前に料金を知りたい方は、見積もりを依頼しておきましょう。

火災保険料

建物にかかる費用の1つが、火災保険料です。【フラット35】のように、住宅ローンの借入にあたり火災保険料への加入が必須となっていることもあります。火災保険料は保険会社や商品、補償内容、補償金額などにより異なるため、複数プランを比較検討した上でご自身に適したものを選択すると良いでしょう。

その他

住宅ローンの借り入れ時にかかる諸費用は上記の他、住宅ローン契約時にかかる印紙税や団体生命保険料などがあります。

また「住宅ローンの諸費用」とは意味合いが異なりますが、土地・建物の購入にあたり、不動産会社が仲介に入った場合は仲介手数料がかかることがあります。仲介手数料の上限は宅建業法により決められており、基本的には「(取引金額×3%+6万円)+消費税」で求められます。400万円未満の低廉な空き家は、金額に関わらず仲介手数料の上限額が「18万円+消費税」です。基本的に、金額が大きくなるほど仲介手数料の負担は大きくなりやすいといえるでしょう。ただし、宅建業法で定められているのはあくまで上限であるため、実際にかかる費用は不動産会社に確認してみてください。

住宅ローンの借入を検討する際は、諸費用も含めてシミュレーションしておくことが大切です。

なお、住宅ローンの諸費用を借入金額に含められる「諸費用ローン」を提供しているところがあります。【フラット35】もその1つです。詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【フラット35】の諸費用ローンとは?借入金額に組み込める費用と注意点

住宅ローンの選び方④:団体信用生命保険の保障内容を確認する

団体信用生命保険は、住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合に、保険金から住宅ローンが完済される仕組みの保険です。通称、「団信」と呼ばれています。民間金融機関の住宅ローンでは、借入にあたり団信への加入を必須としていることがほとんどです。

団信に加入する場合は、次のような点を確認しましょう。

  • どのような状態になったら保険金が支払われるのか
  • 保険金が支払われないケース(=免責事項)にはどのようなものがあるか
  • 保険料

団信は一般的な生命保険とは違い、住宅ローンの契約後に内容を変えることはできません。そのため、契約前に十分に検討する必要があるでしょう。団信に関してわからない点があれば、金融機関などに確認してみてください。

住宅ローンは、長期にわたる返済になることが多いでしょう。長い返済期間の中で、想定外のことが起こる可能性は十分に考えられます。団信の場合、保険料は住宅ローンの金利に含まれているケースが一般的です。既存の生命保険の内容も再確認しながら、ご自身に適した保障内容を考えていきましょう。

団信についてさらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事もご覧ください。

住宅ローンの団信とは?主な種類や加入するときの注意点について解説

住宅ローンの選び方⑤:その他

ここからは、住宅ローンの選び方以外にチェックすべきポイントについて解説します。これまでご紹介した選ぶときのポイントも踏まえた上で、ご自身に適した住宅ローンを検討していきましょう。

返済方法

住宅ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。元利均等返済は毎月の返済額が一定であるため、家計管理がしやすくなるメリットがあります。また、「元金と利息の合計額が一定」であるため、返済当初は利息の割合が高くなることも特徴の1つです。元金均等返済と比較すると、借入当初は元金が減りにくく、総返済額が大きくなりやすいといえます。

元金均等返済は、毎月の返済額のうち「元金の金額が一定」である返済方法です。そのため、借入当初は返済額が大きくなるものの、元利均等返済よりも早く元金が減るので総返済額が少なくなりやすい特徴があります。

一般的に、住宅ローンの返済方法は元利均等返済が選ばれることが多いでしょう。金融機関によっては、元利均等返済のみ取り扱っているところもあります。どちらの返済方法にもメリット・デメリットがあるため、その他のチェックすべき項目も踏まえて総合的に判断してみてください。

返済方法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

元利均等返済とは?元金均等返済との違いや返済方法の選び方についても解説

サービス内容

金融機関によっては、独自のサービス内容を提供していることがあります。たとえば住信SBIネット銀行では、条件達成に応じてATM出金手数料・振込手数料の無料回数が付与される契約者ランク制度を導入しています。ランクアップの条件の1つに「住宅ローンの利用」という項目があり、住宅ローンを利用することによりランク制度の恩恵が受けられる可能性があるのです。住宅ローン選びで悩んだ場合は、金融機関独自のサービスがあるかどうかも確認してみてください。

住宅ローンの選び方に関する注意点

ここでは、住宅ローンの選び方に関する注意点について解説します。注意点もきちんと把握した上で、ご自身に最適な住宅ローンを検討していきましょう。

金利の低さだけでなく総合的に判断する

借入時点での金利が低く設定されているとしても、長い目で見た場合に必ず住宅ローンの返済負担を軽減できるとは限りません。住宅ローンの借入にあたり、利子だけでなく様々な諸費用が発生するからです。諸費用を含めた総返済額をシミュレーションしてみると、金利が高い金融機関の方がお得になるケースも考えられます。住宅ローンを選ぶ際に金利は重要なポイントの1つとなりますが、金利の低さだけでなく諸費用を含めて総合的に判断していくことが大切です。

また、変動金利や固定金利期間選択型を選択する場合は、金利上昇リスクへの対応についても考えておくべきでしょう。金利上昇リスクに備える方法については、こちらの記事もご覧ください。

住宅ローンの金利が変動する要因は?将来の金利上昇に備える方法

正確なシミュレーションは金融機関に依頼する

住宅ローンの返済シミュレーションは、各金融機関のWebサイトでも行うことが可能です。しかし、インターネット上で提供されているサービスは、住宅ローンに詳しくない人も気軽に利用できるように簡易的なシミュレーションであることが多いでしょう。より正確に試算したい場合は、金融機関に依頼することをおすすめします。

住宅ローン選びで困ったときの相談窓口

ここまでご紹介したように、住宅ローンを選ぶ際には検討すべき項目が多くあります。そのため、どのように比較すれば良いのか、どのように判断すれば良いのかわからず不安に感じる人もいるのではないでしょうか。ここでは、住宅ローン選びで困ったときの相談窓口についてご紹介します。

借入条件の詳細や具体的な手続き方法が知りたい場合

借入条件の詳細や具体的な手続き方法が知りたい場合は、各金融機関の窓口に相談してみてください。金融機関によって、細かい内容が異なるからです。

金融機関では「大体いくらまで借入ができるのか」「取り扱いのある金利タイプにはどのようなものがあるのか」といった住宅ローンに関する基本的な内容から、「団信の保障内容を詳しく知りたい」といった具体的な内容まで相談できます。金融機関の多くは無料で相談できる仕組みとなっているため、何か不安に感じることがあればまずは金融機関に相談してみましょう。相談する中で新たに疑問が生じた場合は、その都度質問してみてください

ただし、金融機関の場合、取り扱いのない他社の住宅ローンに関する相談はできません。複数の住宅ローンを比較したい場合は、ファイナンシャルプランナーなど別の相談先を検討してみてください。

ライフプランも含めて相談したい場合

住宅ローンの返済だけでなく将来かかる費用を含めて相談したい場合は、ファイナンシャルプランナーへの相談がおすすめです。お金のプロであるファイナンシャルプランナーは、住宅ローンの相談だけでなく家計の見直しや投資・保険に関する相談などもできます。ただし、相談にあたり料金がかかる可能性があることや、担当者によって得意分野が異なる点に注意が必要です。

金融機関やファイナンシャルプランナーの他、住宅金融支援機構の窓口や住宅メーカー・不動産会社の担当者に相談する方法もあります。住宅ローンの相談先については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

住宅ローンの相談はどこにすれば良い?窓口の選び方や必要なものなども解説

住宅ローンの選び方を知り、ご自身に適したものを選択しよう

今回ご紹介したように、住宅ローンを選ぶ際にチェックすべきポイントには、金利タイプ・住宅ローンの種類・諸費用・団信の保障内容などが挙げられます。住宅ローンは借入金額が大きくなりやすく、長期にわたって返済していくことになるため、複数の金融機関を十分に比較検討した上でご自身に適したものを選択することが大切です。

住宅ローン選びで悩んでいることがある場合は、金融機関やファイナンシャルプランナー、住宅メーカー・不動産会社の担当者などに相談してみてください。専門性の高い人に相談することで、これまで見えてこなかった視点から考えられるようになる可能性があります。金融機関であれば無料で相談できることが多いため、住宅ローン選びで不安に感じている点があれば、ぜひ活用してみてください。

投稿者

  • 亀梨奈美

    大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。
    2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
    「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。

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