最終更新日: 2024年11月29日

住宅ローンの借り入れにあたり、金融機関は申込者の返済能力を確認するために「審査」をします。通常、申し込み前の「事前審査」と正式に申し込んだ後の「本審査」の2回にわたって審査が行われます。

今回は、住宅ローンの「本審査」について解説します。審査される項目や借り入れの流れ、必要な書類なども解説しますので、これから住宅ローンの申し込みを控えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【目次】
住宅ローンの本審査とは
住宅ローンで審査される項目
住宅ローンを借り入れするときの流れ
住宅ローンの本審査に必要な書類
住宅ローンの本審査に落ちたときの理由と対処法
住宅ローンの本審査に関する注意点

住宅ローンの本審査とは

住宅ローンの本審査とは、事前審査が終わり正式な申し込みをした後に行われる審査のことをいいます。住宅ローンの借り入れに審査がある理由は「長期にわたってきちんと返済できる人物・融資条件であるか」を見極めるためです。金融機関からすれば、貸し出しても資金を回収できなければ大きな損失を被ってしまいます。そのため、金融機関は本人の年収や勤務先、担保となる土地・建物などの情報を基に、総合的に判断しているのです。

事前審査と本審査の違い

一般的に、住宅ローンの審査は2回行われます。住宅にかかる費用が決まってから行われる「事前審査」と、事前審査が終わり正式な申し込みをした後に行われる「本審査」です。

事前審査では、申し込みをした本人の年収や勤務先、勤続年数、年齢、家族構成などの情報を申告します。審査にかかる期間は、数日~1週間程度であることが多いでしょう。事前審査は、購入する物件が決まった後に行われるのが一般的です。

事前審査が通過した後に、不動産売買契約や建物工事請負契約を行います。そして、契約書などの必要書類を準備した上で住宅ローンの正式な申し込みへと進みます。この際に行われるのが「本審査」です。本審査では保証会社からの審査があったり、団体信用生命保険への加入などの観点から審査されたりするため、時間がかかります。審査にかかる期間は金融機関によって異なりますが、1週間から2週間程度であることが多いでしょう。

なお、住宅ローンの事前審査は「仮審査」と呼ばれることもあります。事前審査についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

住宅ローンの仮審査とは?評価項目や必要書類、申込時のポイント

【フラット35】と民間金融機関では本審査の性質が異なる

住宅金融支援機構の提供する【フラット35】と民間の金融機関が提供している住宅ローンでは、大まかな借り入れの流れは一緒です。しかし、審査基準や事前審査・本審査の位置付けが異なる部分があるため注意が必要です。

【フラット35】の場合、申し込み窓口は民間の金融機関にあります。そのため、事前審査は窓口となる金融機関が行うのが一般的です。しかし、【フラット35】の本審査は住宅金融支援機構が行います。別の機関がそれぞれ審査をしているため、事前審査は通っても、本審査では通らなかったというケースがあるのです。

もちろん、民間金融機関でも「事前審査に通過して本審査には通らない」というケースはあり得ます。とはいえ、【フラット35】と民間金融機関の住宅ローンでは、事前審査と本審査の性質が異なることに注意しましょう。

住宅ローンで審査される項目

ここでは、一般的に住宅ローンの借り入れにあたり審査される項目についてご紹介します。これから住宅ローンの借り入れを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

本人の属性に関する項目

・年収

・勤務先

・勤続年数

・雇用形態

・年齢

・家族構成 など

住宅ローンの借り入れにあたり、契約者本人の返済能力があるか審査されます。上記のような収入の安定性、完済時の年齢などの情報から「長期にわたってきちんと返済を続けていける人物であるか」を総合的に判断しているのです。

融資条件

・借入金額

・自己資金

・借入期間

・連帯保証

・物件の担保評価 など

住宅ローンの審査では、自己資金に充てる金額や借入金額といった融資条件も判断されています。さらに、万が一返済が滞ってしまったときに備えて、連帯保証や担保となる物件についても審査時に考慮されます。

また、年収に対するローンの年間返済額の割合を示す「返済比率」も、借入金額などの融資条件に影響を与えます。借入金額に不安を感じている方は、返済比率も意識してみてください。

本人の健康状態

住宅ローンの借り入れにあたり、団体信用生命保険への加入を必須としている金融機関が多くあります。団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合に、保険金から完済される制度のことです。団体信用生命保険の加入にあたり、本人の健康状態がチェックされるのです。

団体信用生命保険の細かな審査基準は公開されていませんが、加入できない場合は住宅ローンの借り入れ自体が難しくなるケースもあります。健康状態に不安を感じる方は、通常の団体信用生命保険への加入が難しい方向けの「ワイド団信」や、団体信用生命保険への加入が必須でない「【フラット35】」などを検討してみましょう。

実際に金融機関が審査の際に考慮している項目

国土交通省が公開している「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」では、金融機関が審査の際に考慮している項目が調査されています。「融資を行う際に考慮する項目」のうち、金融機関からの回答が9割を超える項目は次の通りです。

完済時年齢(99.1%)

健康状態(98.2%)

担保評価(98.2%)

借入時年齢(97.8%)

年収(95.7%)

勤続年数(95.3%)

連帯保証(95.1%)

金融機関の営業エリア(91.0%)

返済負担率(92.1%)

参考:国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書

調査結果から、上記の項目は住宅ローンの審査の際に考慮される可能性が非常に高いといえるでしょう。なお、住宅ローンを借りるときは「審査に通るか」という観点も大切ですが、「返済できるか」という視点で考えることも大切です。長期にわたる返済になることが多いため、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。

住宅ローンを借り入れするときの流れ

ここでは、住宅ローンの借り入れをするときの一般的な流れについて解説します。住宅ローンの申し込みをする前に、全体の流れの中から本審査の位置付けを把握しておきましょう。

住宅ローンの事前審査

購入する物件や住宅ローンの借り入れをしたい金融機関が決まったら、住宅ローンの事前審査を申し込みます。窓口での申し込みだけでなく、インターネットから事前審査の申し込みができる金融機関もあります。また、不動産仲介会社やハウスメーカー、工務店を経由して事前審査を申し込むことも可能です。審査にかかる期間は、数日から1週間程度であることが一般的です。

物件の契約締結

住宅ローンの事前審査が通ったら、購入する物件の契約に進みます。土地や建物の購入であれば不動産売買契約、注文住宅であれば建物工事請負契約を締結します。

この時点ではまだ本審査が終わっていないため「確実に住宅ローンの借り入れができる」とは限りません。契約時には、本審査に通らなかった場合に契約を白紙撤回できる内容の「ローン特約」が入っているか、必ず確認しておきましょう。

住宅ローンの本審査

住宅ローンの本審査では、事前審査のときよりも細かく情報を確認されます。そのため事前審査よりも審査にかかる時間が長く、1週間から2週間程度かかるのが一般的です。状況によっては、さらに審査期間が長引くこともあるでしょう。

なお、事前審査に通っているからといって、必ず本審査も通るとは限りません。万が一本審査に落ちてしまった場合は、他の金融機関を検討するなどの対処法を検討してみましょう。

住宅ローンの契約

本審査に通った後は、住宅ローンの契約に進みます。正式には「金銭消費貸借契約」といい、略して「金消契約」と呼ばれることもあります。

物件の引渡し日が住宅ローンの実行日となるのが一般的です。融資の実行に向けて、不動産会社や金融機関などと日程を調整していきましょう。

住宅ローンの実行

住宅ローンの実行日当日は、売主・買主・不動産会社の担当者・司法書士などが金融機関などに集まります。住宅ローンが実行されて物件の残金を支払い、鍵などの引渡しが行われます。司法書士が登記手続きを行い、住宅ローンの借り入れに関する一連の流れは完了です。

住宅ローンの本審査に必要な書類

ここでは、住宅ローンの本審査に必要な書類を具体的にご紹介します。あらかじめ必要な書類を把握して、慌てないように早いうちから準備をしておきましょう。

申込書類

・住宅ローン借入申込書

・個人情報の取扱いに関する同意書

・団体信用生命保険の加入申込書・告知書 など

住宅ローンの事前審査に通過した後は、本審査にあたり申し込みが必要になります。例えば、申込書類の一例として上記の書類が挙げられます。基本的には金融機関で書類が準備されていますので、必要事項を記入していきましょう。

本人確認書類

・運転免許証

・健康保険証

・住民票の写し など

住宅ローンの申し込みをした本人であるか確認するための書類です。そのため、必ず申込者本人の書類を準備してください。その際、有効期限にも注意しましょう。住民票の写しなど役所で発行されるものは、原則として発行から3か月以内とされるのが一般的です。詳しくは、各金融機関に確認することをおすすめします。

収入確認資料

・源泉徴収票の写し

・課税証明書もしくは住民税特別徴収税額の通知書

・確定申告書の写し

・納税証明書 など

住宅ローンの審査にあたり、本人の収入は大事な審査項目の1つです。収入を証明できるものとして、上記のような書類が挙げられます。会社員でも、給与所得以外に所得があり確定申告している方は、確定申告書の写しや納税証明書も必要になるでしょう。

物件書類

・売買契約書の写し

・工事請負契約書の写し

・重要事項説明書の写し

・物件概要が分かるチラシなど

・土地・建物の登記事項証明書 など

購入する物件の詳細が分かる書類を準備します。戸建て・マンションの違いによっても準備する書類が異なるため、詳しくは金融機関などに確認しましょう。

その他必要となる書類

勤続年数が短い場合、職歴書や給与証明書などの提出を求められることがあります。また、他に借り入れがある場合に、借入明細書などが必要となるケースもあります。金融機関によって準備する書類が異なるため、あらかじめ必要となる書類を確認して準備することで、スムーズに本審査を進めやすくなるでしょう。

参考までに、株式会社ファミリーライフサービスで【フラット35】の申し込みをする場合は、以下の書類が必要になります。

https://www.familyls.jp/estate/pdf/flat35_required20220405.pdf

住宅ローンの本審査に落ちたときの理由と対処法

住宅ローンの事前審査に通っても、本審査で落ちてしまうケースがあります。ここでは、住宅ローンの本審査に落ちたときの理由と対処法について解説します。

住宅ローンの本審査に落ちたときの理由

実際のところ、住宅ローンの細かな審査基準は公開されていません。万が一住宅ローンの本審査に落ちてしまったとしても、金融機関から具体的な理由を教えてもらうことはできないでしょう。しかし先ほどもご紹介したように、金融機関の審査項目には共通している部分があるため、ある程度推測することは可能です。

事前審査に通過しているのに本審査に落ちてしまう理由の1つが、書類不備です。事前審査で申告した情報に誤りがあることが本審査で発覚すれば、内容によっては本審査に落ちてしまう可能性が考えられます。

また、事前審査で申告した情報と本審査で提出した書類の内容が異なる場合も、審査結果に影響を及ぼす可能性があります。事前審査をするときには、間違いがないように不動産会社や住宅メーカー、金融機関の担当者などにしっかりと確認してもらった上で提出することをおすすめします。

さらに、団体信用生命保険への加入が難しいことも本審査に落ちてしまう理由として考えられるでしょう。団体信用生命保険への加入を必須としている金融機関が多いため、健康状態によっては住宅ローンの契約自体が難しくなってしまうケースがあるのです。

住宅ローンの本審査に落ちたときの対処法

先ほども解説したように、住宅ローンにおける細かな審査基準は金融機関によって異なります。そのため、住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合でも、他の金融機関であれば審査に通過できるケースもあるのです。住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合は、他の金融機関での申し込みも検討してみるとよいでしょう。

また、健康状態が原因である場合は、団体信用生命保険への加入が難しい人向けの「ワイド団信」付の住宅ローンや、団体信用生命保険への加入が任意である「【フラット35】」を検討してみてください。

住宅ローンの本審査に関する注意点

ここでは、住宅ローンの本審査に関する注意点について解説します。注意点を理解して、住宅ローンの本審査に備えましょう。

事前審査で申告する内容に誤りがないかきちんと確認する

事前審査で申告した内容と本審査で提出した内容が異なる場合、本審査に落ちてしまう可能性があるでしょう。書類不備をなくすために、事前審査で申告する内容に誤りがないか、きちんと確認することが大切です。できれば金融機関の担当者など、ご自身以外にも確認してもらうとよいでしょう。

住宅ローンの本審査に必要な書類は早めに準備しておく

住宅ローンの本審査には、さまざまな書類が必要になります。あらかじめ準備できそうな書類を揃えておくと、スムーズに審査に進みやすくなるでしょう。

ただし、書類の有効期限には注意が必要です。住民票の写しや印鑑証明書など、役所で発行される書類は発行から3か月以内とされることが多いでしょう。期限を確認せずに準備してしまうと、必要な時期に期限切れとなり提出できない可能性があります。あらかじめ有効期限を確認した上で、事前準備を進めると安心です。

住宅ローンの審査に不安を感じる人は事前対策をしておく

住宅ローンの審査に不安を感じている人は、できる限りの事前対策をしておくことをおすすめします。

例えば、頭金として準備する金額を増やすことが挙げられます。頭金が増えればその分借入希望金額が少なくなるため、返済比率を下げやすくなります。親などから資金を援助してもらえる場合は、住宅ローンの申し込み前に受け取ることで頭金として活用しやすくなるでしょう。

また、借入希望金額を下げる方法の1つとして、物件の希望条件を見直すことが挙げられます。一般的に、利便性が高い立地で高性能な設備が整っている住宅であればあるほど、購入にかかる費用も高額になり、借入金額も多くなりやすいでしょう。物件の希望条件を見直すことにより、全体的な予算を下げられる可能性があります。結果的に、借入希望金額を下げることにもつながるでしょう。

さらに、借入期間を長くすると返済比率を下げられるため、審査に通過しやすくなる可能性があります。ただし、返済にかかる期間が長くなると支払う利息も増えます。借入期間を長くする場合、余裕があるときに繰り上げ返済を活用して、総返済額を減らす工夫をする方法も考えられるでしょう。

なお、住宅ローンの審査結果によっては、金融機関から連帯保証人をお願いされることがあります。申し込み時点では必ずしも連帯保証人を立てなければならないわけではありませんが、住宅ローンの審査に不安を感じている方は、連帯保証人になってくれる人を見つけておくと手続きを進めやすくなるでしょう。

これらの事前対策は、審査が通らなかった場合の対処法としても効果的なケースがあります。

審査期間中は他社からの借り入れや転職などを避ける

住宅ローンの審査期間中は、申告した情報が変更になるような行動は避けるべきだといえるでしょう。特に他社からの借り入れや転職・退職は審査項目に大きく影響するため、審査がやり直しになってしまう可能性が高まります。審査に通過していたとしても、再度審査をすることで審査に落ちてしまったり、融資条件が変わってしまったりする可能性も考えられます。

他社からの借り入れで注意したいのが、クレジットカードです。クレジットカードの分割払いやリボ払いを利用すると、返済比率に影響を与えてしまう可能性があります。さらに、クレジットカードのキャッシングは「借り入れ」と判断されてしまうでしょう。審査期間中は、クレジットカードを利用した買い物にも注意が必要です。

ローン特約の内容をきちんと確認する

住宅ローンの本審査を受ける前に、不動産売買契約や建物工事請負契約が行われます。契約時には、必ず「ローン特約」の有無や内容をきちんと確認しておくことをおすすめします。

ローン特約とは、住宅ローンの本審査に通らなかった場合に、契約を無条件で白紙撤回できるという内容の特約のことです。ローン特約が適用されると、既に支払った手付金も返還されることになります。トラブルを防ぐため、ローン特約を使う場合の契約解除方法などを具体的に確認しておきましょう。

なお、ローン特約には期限が設けられていることが多くあります。そのため、期限までに本審査の結果が出るように手続きを進めていきましょう。

住宅ローンの借り入れにあたり「事前審査」と「本審査」の、2回審査を受けるのが一般的です。本審査に通過するためには、事前審査に必要な情報を誤りなく申告したり、本審査に必要な書類を不備なく準備したりすることが大切です。細かな流れや必要な書類などは金融機関によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

住宅ローンの審査に不安を感じている人は、頭金を増やしたり、借入希望金額を減らしたりするなどの事前対策をしておくことをおすすめします。また、金融機関によって審査基準が異なるため、不安な人は複数の金融機関を検討しておくとよいでしょう。

投稿者

  • 亀梨奈美

    大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。
    2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
    「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。

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