2024年3月19日の日銀の会合でマイナス金利政策の解除が発表されました。マイナス金利の解除で、住宅ローン上昇が気になる方も多いのではないでしょうか。
変動金利の住宅ローンは、2019年以降のマイナス金利導入から0.5%以下の金利を提示する金融機関が多くなりました。マイナス金利政策が解除されることで、今後住宅ローンの金利はどうなっていくのでしょうか。
この記事では、マイナス金利政策の解除によって住宅ローンにどのような影響があるのかについて基礎的な項目を解説していきます。
【目次】
マイナス金利政策の解除とは?
住宅ローンの金利になぜ影響するの?
今後住宅ローンをどう選ぶべきか
マイナス金利政策の解除後の住宅ローンは金利変動に備えて選ぶ
マイナス金利政策の解除とは?
昨今騒がれている「マイナス金利政策」とはどのような経緯で導入されたのでしょうか。解除されたタイミングではありますが、ここでは日銀の政策金利など基礎的な用語や背景にある情報を整理しておきましょう。
また、マイナス金利政策の解除によって、どのような影響があるのかも解説していきます。
日本銀行(日銀)の金融施策とは
日銀の金融政策とは、物価の安定と国民経済の健全なものにするために、公開市場操作(オペレーション)などの手段を行い、通貨や金融の調整を行っています。公開市場操作とは、資金の貸し付けや国債の買い入れなどを行うことです。そのため、日銀の政策金利は経済や政治政策によって変動します。
2016年、日銀はデフレ脱却と金融緩和を行う為にマイナス金利を適用しました。マイナス金利とは、日銀が銀行から預かる預金に通常は利子が付くところ、逆に手数料として支払ってもらう仕組みです。我々一般の預金者にマイナス金利が適用されるわけではありません。マイナス金利を適用した理由は、銀行が日銀に預けたままにすると手数料が発生するため、積極的に企業への貸し出しや投資に資金を回すように促し、経済活性化とデフレ脱却を目指したためです。
しかし、2022年以降においては世界の状況が変わり、アフターコロナにおける経済回復やロシア・ウクライナ問題などの影響によって世界的な物価高となりました。
米国や欧州などでは、物価・インフレ抑制のために政策金利の利上げが行われ、日本もその流れを追って本格的な利上げに突入すると予測されていました。
そして、2024年の春闘で賃上げに応じる企業が増えてきたこともあり、植田日銀総裁がマイナス金利政策の解除を発表しました。マイナス金利政策は解除されましたが、日銀は急激なインフレを防ぐために、緩やかに利上げを行っていくのでは考えます。現在の日本は、少子高齢化によって人手不足を解消しようと賃金を高くしてインフレ傾向にしようとする一方で、人口動態に起因するデフレ圧力も高いです。日銀は今後もデフレ阻止のための緩和的な金融政策を取らざえ得ないでしょう。
マイナス金利政策を解除すると何が起きるのか
前章の通り、マイナス金利政策の解除に伴い、政策金利が上昇することが予想されます。これにより、日常生活では銀行預金の金利が上昇し、銀行に預けた資産からの利息収入が増加します。同時に、年金や保険などの資産運用による利回りも期待できます。
一方で、経済活動においては金利上昇により企業の資金調達が鈍くなり、経済活動が抑制される可能性があります。
住宅ローンの金利については、マイナス金利政策の影響で適用金利が0.5%以下に抑えられ、住宅購入が容易になっていました。マイナス金利解除後、日銀は慎重な利上げに舵を切っているため、米国のように急激に上昇する可能性は低いと考えられています。
住宅ローンの金利になぜ影響するの?
住宅ローンに適用される金利は、固定金利と変動金利に分かれており、どちらも政策金利に連動します。ここでは、住宅ローンの金利の種類と金利がどのように決まるのかを説明します。
住宅ローンの金利の種類について
住宅ローンの金利タイプは、主に固定金利と変動金利の2種類があります。
固定金利は、金利が固定されるタイプであり、全期間、3年、5年、10年、15年など金融機関が定めた期間が選べます。固定金利の特徴は、金利が決まっているため、毎月の返済額が同じとなり、期間中で変わりません。金利変動の影響は受けませんが、適用される金利が変動金利より高いため、総支払額が多くなります。
変動金利は、そのときの市況によって適用金利が変わり、半年に一度、金利の見直しがあります。さらに、固定金利より適用金利が低く、毎月の返済額を抑えられる点が特徴です。しかし、金利が上昇した場合、毎月の支払額が増えて、固定金利よりも総支払額が多くなるリスクもあります。
固定金利と変動金利のメリットとデメリットについて、以下の表にまとめました。
固定金利 | 変動金利 | |
---|---|---|
メリット | ・毎月の支払額が決まっている ・家計管理がしやすい ・金利リスクに影響しない |
・支払額が低い ・利息負担が少ない ・総支払額が少ない |
デメリット | ・金利が高め ・月々の返済額が高い ・総支払額が多くなる |
・半年に一度、見直しがある ・返済額が変わることがある ・金利リスクに影響する |
住宅ローンの金利タイプについては以下の記事でも解説しているため、ご参照ください。
住宅ローンの変動金利とは?固定金利との違いや金利タイプの選び方も解説
住宅ローンの金利はどのように設定されるのか
住宅ローンの金利は、日銀や民間金融機関が発表している金利をもとに基準金利が設定されます。基準金利とは、店頭で出している金利であり、一般的な商品の定価に当たります。
フラット35は住宅ローン担保証券の利回り金利、民間金融機関では15年超のスワップレートを基に金利を設定しています。
また、変動金利は、短期プライムレートに連動して金利が決まります。短期プライムレートとは、銀行が優良とされる企業に貸し付ける1年以内の短期貸付の金利を指します。そして、短期プライムレートは政策金利の動向に影響されやすい特徴があります。金融機関の標準金利は、短期プライムレートに1%くらいの一定幅をプラスして設定します。
マイナス金利政策解除から住宅ローンの金利変動までの流れ
マイナス金利政策が解除になった影響によって、今後金利の見直しが行われる際に金利が上昇する可能性があります。とある銀行においては、普通預金の金利が0.001%から0.02%と20倍と金利が上昇しています。
仕組みとしては、政策金利の上昇に伴って短期プライムレートが上がり、さらに短期プライムレートの上昇によって、住宅ローンの変動金利も上昇します。そのため、変動金利を利用している場合は毎月の返済負担が増える可能性もあるため、事前に資金面の備えを進めておきましょう。
今後住宅ローンをどう選ぶべきか
2024年4月の住宅ローン金利は、変動金利で0.3%〜0.6%の間を維持しています。また、フラット35(借入期間21年以上かつ融資比率9割以下)の4月の金利は、1.82%で前月より0.02%下落しています。マイナス金利政策の解除が発表された翌月のタイミングですが、現時点では大きく影響を受けず低金利を維持しています。
住宅の購入にあたって住宅ローンを検討する際は、契約時の金利の低さだけで決めるのではなく、金利変動に対処できるかどうかを考慮する必要があります。変動金利を選ぶ場合、金利上昇に対する備えがないと、返済負担で家計が苦しくなる可能性があります。
将来的なライフイベントを考慮して返済したい方は、固定金利を選ぶのもよいでしょう。固定金利は、適用金利が変動金利より高くなりますが、月々の支払額が変動しないため、出費が多くなる時期に金利の変動リスクを受けずに返済が継続できます。
マイナス金利政策の解除後の住宅ローンは金利変動に備えて選ぶ
マイナス金利政策の解除をきっかけとして、今後も政策金利が上昇する可能性も考えられます。その影響により、住宅ローンで変動金利を適用している場合、毎月の返済負担が増える可能性があります。
また、住宅ローンをこれから検討される方は、ライフイベントに応じて金利上昇リスクに備えられる商品を選定していく方がよいでしょう。そして、すでに住宅ローンを支払っている方は、将来的な金利上昇を想定して住宅ローンの借り換えや金利変更を検討するなど対策が必要になるでしょう。
千田 サヨ(ちだ さよ)/ファイナンシャルプランナー
金融・不動産ライター。金融営業・ハウスメーカー勤務の経験し、金融・不動産に特化したライターとして独立。
不動産分野・住宅ローン・債務整理分野の記事執筆100記事以上。お金のことがわからない方に向けた記事執筆を得意としています。