最終更新日: 2024年11月29日
住宅ローンを利用してマイホームを購入した後、10年間にわたって税金が減免される住宅ローン控除。
10年という長い控除適用期間中には、どのような生活の変化が起こるかわからず、当初想定していなかった状況に陥ることもあります。
そんなときでも住宅ローン控除を受けられるよう、注意すべき点をあらかじめ確認しておきましょう。今回は、マイホーム購入後に起こりうる3つのパターンを紹介します。
はじめに、改めて「住宅ローン控除」をおさらいしておきましょう
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを購入した後、10年間にわたって所得税額からローン残額の1%が控除される制度のことです。
税金に関する説明書類などの中で、「住宅借入金等特別控除」という言葉を見たことがある人もいるかもしれません。「住宅借入金等特別控除」と「住宅ローン控除」は、言葉は違いますが同じものです。
住宅ローン控除には、本人の年間所得額、住宅ローンの期間、ローンの対象となる住宅、居住などについてさまざまな要件があります。これらをすべて満たさなければ、控除を受けることはできません。
住宅ローンの借換えや繰上返済をしても、控除は引き続き受けられる?
ローン返済を少なくするために、より金利の低いローンに借り換えたり、繰上返済をしたりといったことはよくあります。このようなときでも、継続して住宅ローン控除を受けることはできるのでしょうか。
答えは、ケース・バイ・ケースです。
というのも、住宅ローン控除を受けるためには住宅ローンの返済期間が10年以上であることが要件。借換えや繰上返済をしたために要件から外れてしまえば、その後の住宅ローン控除は適用されなくなってしまいます。
住宅ローンの借換えで新しいローンを組むと、従前のローンは消滅します。新しいローンでも住宅ローン控除を受けるためには、返済期間が10年以上という要件を満たさなければいけません。また、その新しいローンが当初の住宅ローンを返済するためのものという事実が明らかになっていなければなりません。
繰上返済も同様です。繰上返済した後でも返済期間が10年以上残っていれば、引き続き住宅ローン控除が受けられます。しかし、繰上返済して残りの期間が10年を切ってしまうと、住宅ローン控除は受けられなくなります。
転勤することになった・・・住宅ローン控除はどうなる?
住宅ローン控除を受けるには、適用を受ける各年の12月31日までその住宅に住んでいなければいけません。一方で、やっと念願のマイホームを手に入れたのに転勤命令……というのはサラリーマンの間でよく耳にする話。
そもそもは「自分が住むための住宅」を「自分がローンを組んで」買った人が税制特典を受けられるというのが住宅ローン控除の原則ですが、転勤などのやむを得ない事情があるときは別です。転任命令で住めなくなる旨の手続きなどを条件に、特別の措置が設けられています。
その家に住んでいない年の控除は受けられませんが、転勤が解消された後に再びその家に居住すれば、再入居した年から住宅ローン控除が再開され、本来適用を受けられるはずだった残りの期間分の適用を受けられます。
なお、転勤期間中にその家を賃貸で他人に貸していたケースでは、再入居年の翌年から住宅ローン控除が再開します。また、単身赴任で自分は住まないけど家族はその家に住み続けるというケースでは、そのまま住宅ローン控除を継続させることができます。
家を売って別の住まいに住み換える・・・住宅ローン控除はどうなる?
家族の成長にともなって、もっと広い家が必要になったり、逆にもっと小さな家でよくなったりと、住み換えが必要になることもあるでしょう。自分で買った持家に住んでいたら、売って新しい住居に買い換えるという選択も出てくるかもしれません。
家を売ると、当然その家にはもう住まないということなので、これまで受けていた住宅ローン控除はなくなります。一方で、新しく買う家が住宅ローン控除の要件をすべてクリアできていれば、新たに住宅ローン控除が始まります。
ただし、家を売ればその売却額に対する税金の問題が出てきます。
例えば、買ったときよりも高値で売れ、さらに売却時の費用等を差し引いてもプラスなら、譲渡益として税金がかかります。
マイホームの譲渡益には、3,000万円までなら税金がかからない「3,000万円の特別控除」、所有期間によって課税を軽減させる「軽減税率の特例」、課税を後々に繰り延べさせる「特定居住用財産の買い換え特例」などいくつかの特例もあります。買い換えの際には、こうした特例も確認しておきましょう。
また、住宅ローン控除の諸々の要件の中には、「マイホームを購入した年と前後2年ずつの計5年間に、これらのマイホームを売ったときの特例の適用を受けていないこと」というものもあります。つまり、住宅ローン控除と譲渡所得の特例は、どちらか一方しか利用できないのです。
どちらがお得なのかは、売却価格や利益(または損失)の額、新たに検討している住宅ローンの額などによって変わるので、一概にはいえません。専門家などに相談しながら、慎重に選ぶようにしましょう。