最終更新日: 2024年11月29日
住宅ローンの返済は長期にわたります。住宅を購入した際にきちんと返済計画を立てていても、ローン返済期間中、収入や生活の変化によって家計の状況が変わってしまうこともあります。しかし、延滞してしまうと打つ手が限られ、今後ますます状況が厳しくなりかねません。返済が難しいと思ったら返済中の金融機関へ相談するなど、すぐに対策を検討しましょう。どんな選択肢があるのか、事前にきちんと知っておくことが大切です。
【目次】
住宅ローンの支払額を減額させる方法:返済条件変更
住宅ローンの支払額を減額させる方法:借り換え
住宅ローンの返済額を減額せず滞納した場合のリスク
住宅ローン支払額の減額を希望する場合は早めに金融機関に相談を
住宅ローンの支払額を減額させる方法:返済条件変更
借入先の金融機関等に返済条件の変更を申し込み承認された場合には、返済方法等を変更することができます。
返済期間の延長
離婚、病気などの事情により住宅ローンの支払いが困難になった場合、返済期間を延長すると毎月の返済額を減らすことができます。たとえば、全期間固定金利である【フラット35】を利用し、借入額3,000万円を金利1.3%、元利均等返済方式で借り入れている場合、月々の返済額は次のように異なります。
返済期間 | 月々の返済額 | 総返済額 |
15年 | 18.4万円 | 3,304万円 |
20年 | 14.3万円 | 3,409万円 |
25年 | 11.8万円 | 3,516万円 |
毎月の返済は少なくなりますが、返済期間が延びることにより利息の負担が増加するので、その結果、総返済額は増加してしまいます。その後、家計に余裕ができたら延長した返済期間を短縮することもできます。支払い困難な状況が回復したら見直しして、総返済額を抑える工夫をしてください。
返済期間の延長は、必ず認められるものではありません。審査の結果、今後の返済が困難だと判断されれば認められないケースもあります。この判断は銀行など借り入れしている金融機関や、【フラット35】の場合は住宅金融支援機構が行います。
また、当初から35年返済で住宅ローンを組んでいると、延長した場合に返済が終了するのが高齢になってしまうという問題も発生します。延長できる期間も含めて、早めに借入先の金融機関に相談してみましょう。
元金の据え置き(返済猶予)
失業など収入が大幅に減少した方は、毎月の返済は利息部分のみで、一定期間元金の支払いを停止させる返済猶予も検討してみましょう。元金は減少しないものの、月々の支払額を大幅に引き下げることができます。【フラット35】の場合、猶予が認められる期間は最長でも3年となっています。当然のことながら、元金を返済しないことにはローンは終わりません。あくまでも一時的な緊急措置だと考えてください。
一定期間の返済額減額
返済が困難な状況が一時的で、一定期間を経過すればまたもとの返済が可能になる場合には、その期間に限り返済額を減額してもらえることもあります。たとえば、お子さまの進学による教育費の支出や手術・入院による医療費といった支出の増加、産休・育休中の収入減などのケースが考えられます。
当初の返済期間が変わらないのであれば、減額期間が終了した後の返済額は増額。また、総返済額も増加してしまいます。減額後の返済額についても金融機関へしっかり確認しておきましょう。
ボーナス払いの減額/中止
ボーナス払いとは、毎月のローン返済に加え、6カ月ごとのボーナス月にあらかじめ定めた一定額を上乗せして返済する返済方法です。【フラット35】であれば、借入額のうち40%以内をボーナス払いにすることができます。
このボーナス時の追加支払いを減額、あるいは中止して、毎月一定額の返済のみにしてもらえるよう相談する方法もあります。月々の返済額は増加してしまうので支払いが困難になる場合、返済期間の延長も同時に申請することで、月々の支払額を抑えることが可能です。
ボーナス月以外の返済額を低く抑える効果があるボーナス払いですが、ボーナスは給与とは異なり毎回決まった金額が受け取れるわけではありません。期待していた金額を受け取れない場合、とたんに返済が滞ってしまうリスクがあります。
長い返済期間中、現在の収入が維持される保証はありません。勤務先の業績悪化や転職等、借り入れ当初に予想できなかった事態が発生することも あるので、返済できなくなるリスクを抑えたい方は、ボーナス払いは避けたほうが無難です。
繰上返済
ボーナス収入や貯蓄など手持ち資金に余裕がある場合は、ローン残高の一部だけ返済することで、借り入れた元金を前倒しで返済することができます。いずれにしろ、返済した元金に対する利息分を今後は返済しなくてもよくなるため、総返済額が少なくなります。一部繰上返済の場合、返済できる金額に下限を設けていたり、手数料が発生したりするケースもあります。金融機関へ事前に確認をしておきましょう。
繰上返済には、「返済額軽減型」と「期間短縮型」の2種類があります。「返済額軽減型」で繰上返済すると今後の月々の返済額を減額することができます。一方、毎月の返済額は変わりませんが、返済期間を短縮する「期間短縮型」は、利息の軽減効果が高いため総返済額を少なくすることができます。
返済額軽減型 | 期間短縮型 |
借入期間は変えずに、今後の月々の返済額を少なくする方法 | 月々の返済額は変えずに、返済額に応じて借入期間を短縮する方法 |
毎月の家計への負担を抑えられる | 返済額軽減型より利息の軽減効果が高くなる |
繰上返済をするタイミングは、1カ月でも早いほうが利息の軽減効果は高くなります。気をつけなければいけないのは、住宅ローン控除を受けている期間です。繰上返済をしてローン残高を減らしてしまうと、税金の軽減効果が少なくなるなどのデメリットもあるので、特に金利が1%以下のローンの場合には、住宅ローン控除が終わった後にするなど注意が必要です。
住宅ローンの支払額を減額させる方法:借り換え
住宅ローンの見直しは、まず現在借りている金融機関での条件変更等が基本ですが、思い切って別の金融機関で借り換えたほうが、メリットがあるケースもあります。
低金利の住宅ローンへの借り換え
現在の住宅ローンよりも金利が低い別の金融機関でローン残高分を借り入れ、現在の住宅ローンを一括返済します。利息が減少する分だけ月々の返済額が少なくなりますが、融資手数料や登録免許税、司法書士報酬など新たに諸費用がかかってしまいます。融資額にもよりますが、数十万円発生することもあります。
ローン残高が多ければ、借り換えによる利息の軽減効果は高くなります。しかし、残高が残り少なくなってから借り換えを行うと、利息の軽減効果より借り換えによる諸費用のほうが大きくなってしまうことがあります。借り換えの判断は、単に金利を比較するだけではなく諸費用も含めた総支払額で考えましょう。
返済期間を延長して借り換え
住宅ローンの借り換えにおいて、返済期間は既存の借り入れの残存期間以下で設定するのが基本です。ただ、少し厳しい住宅ローン審査にはなってしまいますが、金融機関によっては審査結果次第で、返済期間を当初の残存期間よりも延ばし、月々の返済金額を減少することができる場合があります。選択肢として覚えておくと良いでしょう。また、完済時の年齢を80歳前後としている金融機関が多く、この上限を超える返済期間は設定できません。
住宅ローンの返済額を減額せず滞納した場合のリスク
なんの対策もとらず滞納すると、さまざまなデメリットが発生します。もしものときには、1日でも早く対策をとりましょう。
遅延損害金が発生する
返済日の翌日から、遅延している元金に対して遅延損害金が発生します。金融機関に対する遅延損害金は年利14%のところもありますが、一般的には14.6%です。これが次回の返済時に加算されます。14.6%というと、昨今の低金利の銀行預貯金とくらべると驚くような高金利ですが、これは法律で認められている金利です。遅延すればそれだけ、遅延損害金が膨らんでしまいます。
金利優遇の適用がなくなる
ローン金利の優遇を受けている場合、一度の遅延で優遇の適用が外れて金利が上昇するおそれがあります。優遇幅の大きな住宅ローンで借り入れて金利優遇が適用されなくなってしまうと、月々の返済額が増加し、ますます返済が困難になります。
新規の借り入れが難しくなる
延滞が続くと金融事故として処理され、信用情報機関に返済遅延の情報が記載されることになります。いわゆるブラックリストです。ブラックリストに記載される目安は、61日以上の延滞、もしくは3回以上の延滞とされていて、この情報は完済から5年間保存されます。
信用情報が回復するまでの間は、住宅ローンはもちろんのこと自動車ローンなど他のローンについても新規の借り入れが難しくなってしまいます。また、クレジットカードの新規作成や携帯電話代金の分割払いなどもできません。
競売にかけられる
延滞が6カ月程度続くと、金融機関は債務者(借りている人)に対し一括返済を請求します。それでも返済しない場合、金融機関が担保の住宅を競売にかけることがあります。その場合、裁判所から競売手続き開始と物件の差し押さえの通知が届き、裁判所の執行官が事前通知をしたうえで現況調査に訪れることとなります。
延滞から1年程度で競売が始まり、価格は入札期間中に最も高い価格で入札した人が落札しますが、そもそも物件の室内を内覧せずに入札しているため、市場価格で売却するよりも低くなってしまうこともあります。
落札して取引が完了すると、指定日までに退去しなければなりません。もし、期日までに退去しなかったら不法占拠とみなされ、強制執行が行われる可能性があります。
住宅ローン支払額の減額を希望する場合は早めに金融機関に相談を
返済猶予などの返済条件の変更は、必ずしも希望通り金融機関に承認されるものではありません。とはいえ、ほったらかしにすると状況はますます悪くなってしまいます。家計状況の変化によりどうしても返済が難しくなってしまったら、早めに金融機関へ相談し、誠実に対応してください。それが、大切なマイホームを守るための鍵だと思います。