住宅ローンの借り換えとは、新たな住宅ローンに借り入れし直す手段のことです。借り換えることにより、金利差による利息軽減効果が期待できます。しかし、住宅ローンの借り換えには手数料がかかるため、金利だけでなく手数料も含めて総合的に判断することが大切です。
そこで今回は、住宅ローンの借り換え手数料について解説します。借り換え手数料の支払い方法や注意点についても解説しますので、住宅ローンの借り換えを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
住宅ローンの借り換えにかかる手数料
住宅ローンの借り換え手数料の支払い方法
住宅ローンの借り換え手数料に関する注意点
住宅ローンの借り換えにかかる手数料
ここでは、住宅ローンの借り換えにかかる手数料の項目をご紹介します。どのような手数料がかかるのか把握した上で、住宅ローンの借り換えを検討してみましょう。
保証料
保証料は、住宅ローンの借り入れをする際に保証会社に支払う費用のことをいいます。住宅ローンの借り換えの場合も新規の借り入れと同じように、保証料がかかるケースがあります。金融機関によって保証料の有無や費用、支払い方法などが異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
事務手数料
住宅ローンを借り入れる際に、金融機関に支払う費用が「事務手数料」です。事務手数料には、借入金額に一定割合をかけて計算される金額を支払う「定率型」と、借入金額に関わらず金額が一定である「定額型」の2種類があります。詳細は金融機関や商品によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
印紙税
住宅ローンを借り入れる際、金融機関と「金銭消費貸借契約書」を取り交わします。契約金額に応じた収入印紙を契約書に貼付し、印紙税を納めることになるのです。印紙税は、契約金額に応じて以下のように定められています。(2022年5月現在)
契約金額 | 印紙税 |
500万円から1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円から5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円から1億円以下 | 6万円 |
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
全額繰り上げ返済手数料
住宅ローンの借り換えにあたり、現在借り入れている住宅ローンは全額繰り上げ返済することになります。全額繰り上げ返済するにあたり、手数料が設定されていることがあるのです。手数料の有無や金額については金融機関によって異なるため、現在住宅ローンを借り入れしている金融機関に確認しておきましょう。
登記費用
金融機関は、対象となる物件を担保にして住宅ローンを貸し出すのが一般的です。つまり、万が一住宅ローンの返済が滞った場合に、金融機関が対象物件を差し押さえることができるということです。そのため、対象となる物件には「抵当権」という金融機関の権利が登記されることになります。
住宅ローンの借り換えにあたり、現在借り入れている金融機関が設定している抵当権を「抹消」する登記の手続きと、新しく借り入れをする金融機関が抵当権を「設定」する登記の手続きが必要です。抵当権抹消登記費用と抵当権設定費用には、登録免許税や司法書士報酬などが含まれます。詳しい金額を知りたい方は、あらかじめ見積もりを依頼しておくと安心です。
その他借り換えにかかる費用
現在加入している団体信用生命保険は、完済に伴い解約となります。そのため、新しく借り入れする金融機関で加入し直すことになるでしょう。なお、フラット35であれば団体信用生命保険への加入は必須ではありません。
また、住宅ローンの借り換えに伴い現在加入している火災保険が継続できなくなるケースがあります。一般的には現在加入している火災保険のままで問題ありませんが、詳しく知りたい方は現在加入している火災保険の保険会社に確認してみましょう。
住宅ローンの借り換え手数料の支払い方法
住宅ローンの借り換え手数料の主な支払い方法は「手数料分も住宅ローンの借入金額に含める」、もしくは「自己資金から支払う」の2種類があります。
住宅ローンの借入金額に含めることができれば、貯蓄を減らすことなく借り換えができるメリットがある一方で、借入金額に上乗せした分の利息が増えるデメリットも。金融機関によって借入金額に含められる項目が異なるため、注意が必要です。
自己資金から支払う場合は、借り換えにかかる手数料は住宅ローンの借入金額に影響しません。借入金額に含める場合と比較すると、利息分の負担が軽減されるメリットがあるといえるでしょう。しかし、借り換え手数料のすべてを自己資金でまかなう場合は、一時的にまとまった金額が手元からなくなってしまうことになります。十分な貯蓄がないなどの理由から資金不足に陥る危険性がある場合は、手数料を含めてきちんとシミュレーションをしながら検討していく必要があるでしょう。
住宅ローンの借り換え手数料に関する注意点
ここでは、住宅ローンの借り換え手数料に関する注意点について解説します。住宅ローンの借り換えを検討している方は、注意点についても理解しておきましょう。
手数料は金融機関や商品によって異なる
住宅ローン借り換えにかかる手数料は、金融機関や商品によって異なります。保証料や事務手数料の有無や、料金など項目ごとの金額だけでなく、団体信用生命保険の保障内容など住宅ローンの商品性も異なるでしょう。住宅ローンの借り換え先を比較する際は、手数料の総額や金利、商品の特徴なども含めて総合的に検討することをおすすめします。
借り換えシミュレーションをする際は手数料も含めて計算する
住宅ローンの借り換えシミュレーションを利用して比較検討する場合は、借り換えにかかる手数料も含めて計算しましょう。金融機関によってはインターネットで借り換えシミュレーションをすることができますが、詳しく計算したい場合は金融機関に依頼すると安心です。
住宅ローンの借り換えをするときには、借り換え前後の金利差にも注意しましょう。一般的には、借り換え前後の金利差が1%以上・住宅ローン残高が1,000万円以上・返済期間が10年以上あると、借り換えによる恩恵を受けやすいといわれています。しかし、これはあくまで目安の1つ。金融機関や商品、借り入れ状況によっても借り換えの効果が異なるため、あらかじめ試算しながら検討していく必要があります。
2022年4月、メガバンク3行が住宅ローン固定期間選択型(10年)の基準金利を引き上げることを発表しました。日本では依然として住宅ローンの低金利が続いているものの、将来にわたりずっと低金利の状態が続くとは限りません。特に変動金利や固定期間選択型の金利タイプで借り入れしている人は、金利が上昇した場合の対応を考えておく必要があるでしょう。
金利が上昇した場合の対応として検討できる方法の1つが、住宅ローンの借り換えです。金利上昇局面で住宅ローンの借り換えが効果的なケースとして、変動金利や固定期間選択型を選択している場合に、金利の見直しや固定期間終了などのタイミングで、金利が上昇することが予測できる場面が挙げられます。たとえば、住宅ローンの借り換え先で全期間固定金利を選ぶことにより、金利上昇リスクを抑えることにつながるでしょう。
しかし、これはあくまで一例でしかありません。個々の状況、そして今後の金利水準等により、住宅ローンの借り換えによる利息軽減効果は異なるでしょう。住宅ローンの借り換えを検討する際には、総返済額の比較だけでなく将来も見据え、手数料なども含めた総合的な観点で比較することをおすすめします。
住宅ローンを借り換えするメリット・デメリットや注意点についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
住宅ローンの組み直しとは?借り換えのメリット・デメリットと注意点
亀梨 奈美(かめなし なみ)/住宅ローンアドバイザー
大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。