最終更新日: 2024年11月29日

住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローン契約者の7割超が変動金利を選択し、利用しています。しかし、2024年3月に日銀がマイナス金利政策の解除を正式に発表し、政策金利の影響を受ける住宅ローン金利の上昇も見込まれています。

参考:住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年10月調査)】|住宅金融支援機構

変動金利が上がれば、住宅ローン返済のための支払い額も大きくなり、毎月の家計の負担が心配な方もいるのではないでしょうか。

本記事では、変動金利の上昇によって住宅ローン契約者に及ぼす影響と、金利上昇局面において知っておくべき対処法について解説していきます。金利上昇による返済の不安を解消するためにも、ぜひご一読ください。

【目次】
住宅ローンの変動金利が上がる要因とは
変動金利が上がった場合の対処
固定金利と変動金利はどちらがよいか
変動金利の住宅ローンは金利が上がることを見据えた対策を

住宅ローンの変動金利が上がる要因とは


金融機関の提示する住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートという指標に連動して設定しています。短期プライムレートとは、金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利を指します。

ここでは、住宅ローンの変動金利が上がる要因や仕組み、日銀の施策の影響について紹介していきます。

変動金利が上がる仕組みと影響

住宅ローンの変動金利は、一般的に短期プライムレートと連動しており、短期プライムレートの金利に1%を加えた値が標準とされます。金融機関は通常半年に一度金利の見直しを行い、金利を設定します。

2024年3月時点での短期プライムレートは、2009年1月以来1.475%で据え置かれています。変動金利の動向が気になる方は、短期プライムレートの動きに注目するとよいでしょう。

金利が変動する要因は、政策金利の変動や経済状況にあります。2016年より政策金利はマイナス金利を適用して以来-0.1%を保ったままです。マイナス金利政策の解除によって、政策金利の上昇も考えられます。そうなると、短期プライムレートと共に住宅ローンの変動金利の上昇も避けられない状況となるでしょう。

参考:長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降|日本銀行

日銀の施策の影響

住宅ローンの変動金利が上昇する要因は、短期金利の上昇とその背景にある日銀の金利政策に大きく影響されます。日銀は2016年にマイナス金利政策を導入し、政策金利はマイナス水準で推移してきています。

しかし、2022年後半からロシアのウクライナ侵攻によって原材料不足の影響を受け、世界的な物価上昇が起こりました。アメリカなど他の先進国は急激なインフレ対策として利上げを行っています。日本も年2%の物価上昇率となりつつあるため、インフレの抑制に向けて利上げが近いのではないかとの見解も出ています。

2023年11月に日銀の植田総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、2024年3月には日銀のマイナス金利政策の解除が報道されました。これまで横ばいだった短期金利の上昇も現実味を帯びてきています。

参考:2020年基準消費者物価指数|総務省

変動金利が上がった場合の対処


住宅ローンの変動金利が上がった場合には、毎月の返済額が増え、家計への影響も出てきます。金利変動があった場合、家計の負担を軽減するためには何をすればよいのでしょうか。

ここでは、金利変動の対処法として、住宅ローンの繰り上げ返済や借り換え、固定金利の変更について紹介いたします。

繰り上げ返済する

繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別でまとまった額を返済する方法であり、返済はすべて元本のみにあてられるため、総支払額を効率的に減らすことができます。

繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、後者の「返済額軽減型」で繰り上げ返済を行うと、毎月の返済負担を軽減できます。

繰り上げ返済を行う際には、手続きにあたって手数料が発生する点と手元の資金が不足するリスクがある点に注意し、計画的に行いましょう。

借り換える

契約している住宅ローンについて、固定金利の住宅ローンに借り換える、またはより条件が良い住宅ローンに借り換えるといった方法で金利上昇による毎月の負担を軽減できます。

住宅ローンの借り換えとは、現在借りている住宅ローンを一括返済して、他の住宅ローンを新たに契約することです。メリットは毎月の返済額が減ることや、返済計画によっては総返済額の軽減が期待できる点が挙げられます。デメリットは、審査が必要である点、登記費用や借り換え手数料などのコストがかかる点、そして残債の金額によっては住宅ローン控除が減少する可能性があることが挙げられます。

一般的には、残りの返済期間が10年以上で残債が1,000万円以上あり、金利差が1%以上ある場合に、借り換えのメリットがあると言われています。返済シミュレーションと諸費用の見積もりを行い、現在の住宅ローンと比較検討することが重要です。

固定金利に変更する

変動金利が上昇した場合、固定金利での契約に変更することも返済負担を軽減するための方法です。

固定金利へ変更するメリットは、毎月の返済額が一定になるため、金利変動に左右されずに安定した返済計画が立てられます。デメリットは、固定金利は変動金利よりも高く設定されることが多いため、返済総額が変動金利の場合よりも大きくなる可能性がある点が挙げられます。

固定金利と変動金利はどちらがよいか


2023年の住宅金融支援機構の調査では、住宅ローン利用者の7割以上が変動金利を選んでいます。さらに、【フラット35】以外の住宅ローン利用者の8割弱が金利の低さを理由に選択していることがわかります。

マイナス金利政策の解除が発表され、政策金利の上昇が現実味を帯びている中、2016年から横ばい状態が続いていた短期金利が大幅に上昇する可能性もあります。今後は、契約時点の金利の低さだけで変動金利を選ぶのは、高いリスクが伴う選択と考えられます。

現在、住宅ローンの変動金利は一部の銀行で0.3%を下回る金利も見られ、割安に感じられます。しかし、長期的な視点や毎月の返済負担の安定性を重視するのであれば、固定金利を選択することで金利変動に左右されずに返済できます。

住宅購入に伴い住宅ローンの契約を検討している方は、将来的な金利の変動も考慮したうえで金利タイプの選択を行う必要があります。条件によっては税制優遇制度を適用できる場合もあるため、住宅ローンの検討にあたっては専門家に相談することをおすすめします。

参考:住宅ローン利用者の実態調査 |住宅金融支援機構

変動金利の住宅ローンは金利が上がることを見据えた対策を


住宅ローンの契約において、7割超の方が金利の安さを理由として変動金利を選んでいる現状ですが、日銀のマイナス金利政策の解除を受け、今後は将来的な金利の変動を踏まえて慎重に検討すべき局面に来ています。

変動金利が上昇して返済負担が重くなることが見通せた際には、繰り上げ返済や借り換え、固定金利への契約変更を検討し、毎月の返済負担を軽減するための手段も考えておく必要があります。

これから住宅ローンの利用を検討している方は、返済総額が低いことに越したことはありませんが、資金面に十分余裕が持てない限りは金利変動に左右される状況を避け、毎月の安定的な返済計画を目指した選択をおすすめします。

投稿者

  • 千田サヨ

    金融・不動産ライター。金融営業・ハウスメーカー勤務の経験し、金融・不動産に特化したライターとして独立。
    不動産分野・住宅ローン・債務整理分野の記事執筆100記事以上。お金のことがわからない方に向けた記事執筆を得意としています。

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