一般的に住宅ローンの返済期間といえば35年が最長となるイメージですが、近年では「40年〜50年」といった超長期の返済期間が設定できる住宅ローンも出てきています。
本記事では、住宅ローンの返済年数を40年や50年といった長い期間にすることのメリットやデメリット、利用できる金融機関や気を付けておきたいポイントについて解説していきます。長期にわたる住宅ローンを利用するにあたって疑問や不安を抱えている方は、ぜひ参考としてください。
【目次】
40年の住宅ローンを組んでも大丈夫なのか?
住宅ローンの返済年数を長くすることのメリットとデメリットとは?
40年の住宅ローンを利用できる金融機関
40年で住宅ローンを組む際に気を付けるべきこと
40年の住宅ローンは健康なうちの選択肢と考えよう!
40年の住宅ローンを組んでも大丈夫なのか?
一般的な住宅ローンの最長の借入期間は35年ですが、50年まで借りられるローンを提供する金融機関もあります。
最近では、住信SBIネット銀行 が住宅ローンの最長返済期間を従来の35年から50年に延長し、ネット銀行や大手銀行として初めての超長期商品を発売したことが話題となりました。また、超長期の住宅ローンとしては住宅金融支援機構のフラット50 (長期優良住宅限定)も挙げられます。
住宅ローンは金融機関からお金を“借りる”ことであるため、40年や50年といった長い期間の住宅ローンを組むことに対して、「きちんと返済できるだろうか」と不安に思われるかもしれません。
住宅ローンの返済期間が長ければ長いほど、月々の返済額は小さくなり、家計の負担を軽減できますが、一方で、長期にわたる返済では支払う利息も増え、総返済額は膨らみます。どのようなポイントを押さえて返済期間を判断していくべきか、以下で説明していきます。
住宅ローンの返済年数を長くすることのメリットとデメリットとは?
40年など期間の長い住宅ローンを利用するにあたって、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれの内容を把握し、どういった条件を重視するべきかを判断する材料にしましょう。
返済期間を長くする主なメリット
返済期間を長くすることの大きなメリットは、月々の返済額を低く設定し、毎月の負担を軽減できることです。無理のない返済額により、家計にゆとりが生まれます。
月々の返済額が減ると、住宅ローンの審査に通りやすくなります。多くの金融機関では住宅ローンの審査で年収に占めるローン返済額の割合(返済負担率)を重視しているためです。 借入期間を長くすることで、希望する住宅を購入できる可能性が高まります。
また、返済期間を長くすることは、自分の子どもに返済を引き継ぐ親子リレーローンを検討している方にとってもメリットです。返済期間が長いと、子どもに返済を引き継ぐタイミングを柔軟に調整できます。
知っておくべきデメリット
まずは、返済期間が長いことから総返済額が増加することを知っておきましょう。長期の返済においては同じ金利であっても利息の負担金額が大きくなるため、結果として、住宅ローンの総返済額が高くなる可能性があります。例えば、固定金利2.00%、借入金額を4,000万円の場合、返済期間と総返済額の試算結果は以下のとおりです (全期間同じ金利で元利均等返済)。
返済期間 | 35年 | 132,505円 | 55,586,585円 |
---|---|---|---|
毎月の返済額 | 40年 | 121,130円 | 58,076,918円 |
総返済額 | 50年 | 105,516円 | 63,244,028円 |
長期の住宅ローンは完済時の年齢も考慮する必要があり、若いうちに契約しないとリタイア後も返済が続くことになってしまいます。
住宅ローンの返済年数を選ぶ際には、これらのメリットとデメリットを踏まえたうえで将来のライフプランや収入の変化の見通し、月々の返済額などのバランスを考えて設定しましょう。
40年の住宅ローンを利用できる金融機関
40年以上の住宅ローンを提供している金融機関は少なく、今のところ一部の地方銀行などに限られます。ただし、ネット銀行の中でも住信SBIネット銀行は2023年8月より最長返済期間を50年とした住宅ローンの取り扱いをスタートしています。
40年以上の住宅ローンを組みたい場合は、まずは自身が利用する地域の地方銀行を探してみることがおすすめです。地域に密着した地方銀行は、営業圏内の不動産市況や需要にも明るく、柔軟な対応が期待できます。
また、住宅金融支援機構では長期固定金利住宅ローン「フラット50 」を取り扱っています。
2023年10月時点において、フラット50では設定できる返済期間は36年~50年、全期間固定となる金利は年2.180%~年2.650%の範囲となります。対象物件は長期優良住宅として条件を満たした物件に限られます。
また、フラット50では返済期間中に物件を売却することも可能であり、その場合購入する方にフラット50の債務を引き継ぐことができる特約を利用できます。この特約は、売却時に当初よりも金利が上がっていた場合にメリットがあります。
40年で住宅ローンを組む際に気を付けるべきこと
40年といった超長期の住宅ローンを組む際には、いくつかのポイントを押さえることで、借入後の不安を払拭することができます。以下で紹介する2点については、検討する際に必ずチェックしておきましょう。
・購入を希望している物件が適切かどうか判断する
40年の住宅ローンを検討する場合、希望する物件が自分の返済能力に合っているかを考えてみましょう。一般的に住宅ローンの借入額は年収の7倍までにするのがよいとされています。年収500万円の方であれば、ローンを3,500万円程度にしておくのが望ましいといえます。
このような基準額以上の借入は、借入期間を長くすることでできるかもしれません。しかし、40年にわたる返済期間中、無理なく返していけるかについては慎重に考える必要があります。
・繰り上げ返済をする
40年の住宅ローンは金利の負担も大きいため、余裕資金で繰り上げ返済を実行しましょう。返済期間短縮型の繰り上げ返済によって返済期間が短くなり、利息の負担も減らせます。
40年の住宅ローンは健康なうちの選択肢と考えよう!
長期間の住宅ローンは、借入時には有利に働くこともありますが、返済を続けていく中で無理が起きないように計画することが大切です。
返済は金銭的な負担だけでなく、精神的な負担も重なります。余裕のある返済プランを設計するためにも、40年以上の返済期間を設定するメリットとデメリットの双方をしっかりと理解しておきましょう。また、超長期の住宅ローンは取り扱いのある金融機関も限られるため、情報収集を確実に行うことがポイントです。
返済計画についてはファイナンシャルプランナーや住宅ローンの専門家などのアドバイスを受け、家計に無理のない返済計画を立てましょう。
松田 聡子(まつだ さとこ)/ファイナンシャルプランナー
群馬FP事務所代表。日本FP協会認定CFP®・DCアドバイザー・証券外務員2種。ITエンジニア、国内生命保険会社を経て2009年に独立系FPとして開業。
「住宅ローンを無事に返済しきるには健全な計画が肝心」をモットーに住宅ローン相談にも対応中。