最終更新日: 2024年11月29日
「住宅ローン控除」は、ローン残高の0.7%が最大13年間にわたって所得税や住民税から控除される節税効果の高い制度です。
しかし、この制度は自然に適用されるわけではなく、申請しなければ控除は受けられません。今回は、住宅ローン控除の概要と申請方法や注意点について説明していきます。
住宅ローンの借入を検討している方は、参考にしてください。
【目次】
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除の申請に必要な書類と入手方法
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除の注意点
住宅ローン控除の申請でよくある質問
住宅ローン控除は手続き必須!忘れずに申請を
住宅ローン控除とは?
冒頭で説明したように、住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入したときに、所得税や住民税の一部が控除される制度です。
「住宅ローン控除」「住宅ローン減税」と呼ばれることが多いのですが、この制度の正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
ここでは住宅ローン控除の基本を確認していきましょう。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅購入をする人に向けて、金利の負担を軽減するために導入された制度です。その後、何度も改正が行われ2022年度の税制改正に伴い、控除率や控除期間などが大きく改正されました。
住宅ローン控除の内容は、年末時点の残高の0.7%を上限に所得税が減税されるというものです。所得税から引き切れないときは、住民税から最大97,500円まで控除されます。
控除期間は、新築住宅および再販中古住宅は13年、中古住宅は10年です。
住宅ローン控除の主な適用要件についても確認しておきましょう。
・購入した物件に自ら居住
・居住用割合が1/2以上
・住宅ローン返済期間が10年以上
・住宅の床面積(マンションの場合は専有部分)が50㎡以上
(合計所得金額1,000万円以下であれば40㎡以上も適用可能)
・控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下
その他、2022年の税制改正では、対象住宅の環境性能により控除対象額の上限が設定されました。これは、カーボンニュートラルの実現に向けた措置とも言われており、省エネなど環境性能に優れた新築住宅が優遇対象となります。
税制改正により、一般住宅の借入限度額は以前より引き下げられ、3,000万円になりました。一方、国が定める省エネ基準を満たした住宅であれば4,000万円、ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)であれば4,500万円、長期優良住宅など認定住宅であれば5,000万円と借入限度額は上がっていきます。
改正によって、省エネ性能が高い住宅の方が、大きな優遇を受けられるようになったのです。
住宅ローン控除を受ける方法
住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年に確定申告が必要です。
給与所得のみの会社員の場合は、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。
ただし、個人事業主や年収2,000万円以上の会社員、副業収入が年20万円を超える会社員など、確定申告が必要な方は2年目以降も確定申告時に控除申請が必要です。
確定申告の受付期間は毎年2月16日から3月15日ですが、住宅ローン控除の還付申告であれば、申告期間に限らず、居住開始日の翌年1月1日から申告が可能です。
住宅ローン控除の申請に必要な書類と入手方法
確定申告には、いくつか書類が必要です。特殊な書類ではなく、簡単に準備できるものばかりなのでご安心ください。
確定申告時に必要な書類は以下のとおりです。
必要な書類 | 入手場所・方法 |
確定申告書(特別控除額の計算明細書含む) | 税務署又は国税庁のホームページ |
住宅ローンの借入残高証明書 | ・住宅ローンを契約した金融機関・11〜12月(初年度は1月の金融機関も)に郵送されてくる。発行依頼が必要な場合もある。 |
源泉徴収票 | ・勤務先・年末調整後に交付。 |
建物・土地の登記事項証明書 | ・法務局・市区町村の法務局窓口で手続き、又は
オンライン申請。 |
建物・土地の不動産売買契約書や工事請負契約書のコピー | ・不動産会社など・契約時受取。提出はコピーでOK。 |
マイナンバーカードなどの本人確認書類 | ・本人・自身のマイナンバーカードをコピーして添付。 |
耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書のコピー・既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書などのいずれか※一定の耐震基準を満たす昭和56年以前に建築された中古住宅の場合 | ・不動産会社など・建築士、又は国交省指定の検査機関に
よる耐震診断に合格すると証明書が発行される。 |
認定通知書のコピー※認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合 | ・不動産会社など・所管行政庁に申請し、長期優良住宅と
認定されると認定通知書が発行される。 |
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除に必要な書類を確認したので、ここからは控除の申請方法を説明していきます。
1.必要書類を集める
住宅ローン控除の手続きには、前項で紹介した書類が必要です。
1日で全ての取得場所を回るのは大変なので、少しずつ集めておきましょう。
2.確定申告をする
必要書類が揃ったら、オンライン・郵送・窓口のいずれかの方法で確定申告をします。
フォーマットに沿って進めていくだけなので、書類の不足や問題が起こらなければ1時間以内で手続きは終わります。
会社員は入居した翌年1月1日〜3月15日、自営業者やフリーランスは入居した翌年2月16日〜3月15日が申告期限です。
3.還付金を確認する
申請ミスや書類の不足などの不備がなければ、1ヶ月程度で書類に記載した預貯金口座へ還付金が振り込まれます。このとき、金額に誤りがないか必ず確認しましょう。
前述したように、ローン控除の対象は、所得税だけではなく住民税からも控除が可能です。減税額が所得税から引き切れない場合に、住民税から差し引くことになりますが、翌年の住民税での適用となります。
住宅ローン控除の注意点
繰り返しになる部分もありますが、住宅ローン控除を受けるための注意点を再度確認しておきましょう。
借入初年度は確定申告が必要
何度もお伝えしたように、住宅ローン控除を受けるためには確定申告による申請が必要です。
ただし、申請を忘れていた場合でも、5年間は還付申告として住宅ローン控除の申請ができます。忘れたことに気づいたら、すぐに申請をしてください。
2年目以降の年末調整で申請を忘れた場合についても、1月末までであれば修正ができるので、勤務先に相談をしてみましょう。修正ができなかった場合は、初年度同様、確定申告を行えば控除を受けられます。
自営業者の方は、住宅ローン控除を適用せずに確定申告をしてしまうと、原則還付を受けることができないので注意してください。ただし「更正の請求」を行えば還付を受けられる可能性もあるので、まずは税務署に相談してみましょう。
2年目以降は確定申告が不要になる場合もある
会社員の場合、一度確定申告すれば翌年からは年末調整の対象になるため、基本的に確定申告は必要ありません。
翌年以降は、税務署から送られてくる「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」と、金融機関から送られてくる「残高証明書」を、年末調整の際に会社へ提出するだけで控除が適用されます。
「残高証明書」については、金融機関から毎年送られてきますが「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」は、一度に控除期間分全てが送られてくるので注意が必要です。
紛失しないよう、大切に保管しておいてください。
なお、年末調整を行わない自営業の方は、2年目以降も確定申告が必要です。
住宅ローン控除の申請でよくある質問
最後に、住宅ローン控除の申請についてよくある質問にお答えしていきます。
Q:申請はいつからいつまで?
初年度の住宅ローン控除の申請時期は、入居した翌年1月1日〜3月15日までです。
手続きに必要な書類は早めに準備しておきましょう。
Q:確定申告の必要書類を紛失した場合はどうすればいい?
基本的に書類は再発行が可能ですが、中には再発行できないものもあるので書類の保管に気をつけてください。
書類を紛失した際の対処法を見てみましょう。
- 源泉徴収票:会社
- 住宅ローンの借入残高証明書:住宅ローンを契約した金融機関
- 建物・土地の不動産売買契約書:不動産会社
- 工事請負契約書:不動産会社や建築会社
- 住宅性能評価書:全国の評価センターや保証検査機関など
- 認定通知書:再発行不可。ただし、証明書は1級建築士又は登録住宅性能評価機関で、台帳記載事項証明書は役所で再発行可能。
建物や土地に関する書類は、不動産会社やハウスメーカー、工務店などの工事を請負った会社に相談すれば基本的に再発行してもらえます。
ただし、長期優良住宅の認定通知書だけは再発行不可なので、取り扱いに注意してください。
Q:ふるさと納税と併用できる?
ふるさと納税は寄附金控除の一種で、地元や応援したい自治体に寄附ができる制度です。自治体に寄附した金額から自己負担額2,000円を控除した金額が、所得税や住民税から控除されます。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は可能ですが、確定申告時には注意が必要です。
ふるさと納税を確定申告する場合、控除対象が所得税と住民税になり、住宅ローン控除よりも優先して控除されます。そのため、ふるさと納税分の控除額によっては、所得税の住宅ローン控除が満額受けられないことも。
住宅購入する年はふるさと納税の額を抑えるなど、シミュレーションをもとに納税額を考えてください。
なお、確定申告の翌年からは、確定申告不要の「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用できます。ワンストップ特例制度を利用すればふるさと納税の控除対象は住民税のみとなるので、両方の控除を受けられます。
住宅ローン控除は手続き必須!忘れずに申請を
住宅ローン控除は、個人が住宅ローンを利用してマイホームを購入した際に税金の一部が戻ってくる、とても節税効果の高い制度です。
ただし、固定資産税の優遇制度のように、自動的に適用されるものではありません。
確定申告と聞くと「難しそう」「面倒くさそう」と感じるかもしれませんが、インターネット上でフォーマットに沿って入力を進めていくだけなので意外と簡単に申請できます。
今回説明した申請方法を参考にして、確定申告と住宅ローン控除の申請を必ず行いましょう。